$ \DeclareMathOperator{\arccosh}{arccosh} \DeclareMathOperator{\arcsinh}{arcsinh} \DeclareMathOperator{\rank}{rank} \DeclareMathOperator{\rot}{rot} \DeclareMathOperator{\grad}{grad} \DeclareMathOperator{\diver}{div} $

運動物体における電気力学

By A. EINSTEIN

June 30, 1905
はじめに
この文書は、現在では「(特殊)相対性理論」と一般的に呼ばれている理論のもととなった Albert Einstein の論文「Zur Elektrodynamik bewegter Körper」(運動物体における電気力学/運動している物体の電気力学) の日本語訳(和訳)です。 Fourmilab というサイトにあったドイツ語原文の英語訳をもとにしています。 このような有益な情報を web 上に公開してくださった John Walker 氏には感謝です。 本当はドイツ語が読めればそちらをもとに訳せば良かったのですが、どうもドイツ語は大学でやらされてから学んでから、見るだけで吐き気がするくらい嫌いになってしまったので、英語訳の日本語訳という形にしました。
ええと、ややこしいので情報の流れをあらためて書くと、
  1. Einstein がドイツ語の原論文を発表 (1905 年)
  2. Methuen 社により英語訳が発行される (1923 年)
  3. Fourmilab にて同英語訳が公開される (1999 年)
  4. このサイトで上の英語訳の日本語訳が公開される (2010 年)
という感じですかね…。 歴史を感じます (お
また、元にした英語訳は、文体が古いのかイカツイ感じに書いてくれちゃってやがってるからなのかは知りませんが、よく分からない部分がちらほらあったのと、そもそも自分がまだ理解していない部分 (特に後半部分) があるので、誤訳等は多々あると思います[1]。 ページ最上部の「src」というところをクリックすると、このページのソースコードとともに、コメントとして載せてある元の英語訳を見れるので、そちらを参照しつつ、「この表現おかしくね?」ってところがありましたら、メール (ページ最下部参照) なり web 拍手なり経由で指摘していただけると、おそらく多くの人が助かります。
この文書の元とした英訳は、書籍として出版されたものも、web 上で公開されているものもパブリックドメインでライセンスされているらしい[2]のですが、この和訳についてはこのサイトのライセンス (執筆時点では CC by-nc-sa; 変更されている可能性あり) に従うものとします。
文章中の脚注内で、先頭に「(英語版編集者注)」とついているものは Fourmilab の入力者 John Walker 氏の付したものです。 「(翻訳者注)」となっているものは私がつけた脚注です。 何もついていないものは、英語版の翻訳者が付したものだと思います (Einstein によるものもあるかも?) 。
なお、訳している途中で気づいたのですが、岩波文庫からすでに日本語訳が出版されているらしいです。 (アルベルト・アインシュタイン, 内山 龍雄 訳『相対性理論』岩波文庫, 1988) 購入していないので知りませんが、風の噂によると解説もついているらしいですし、なんか 600 円くらいで激安なのでそちらを購入した方が良いかもしれません。
→ なんか気になったので購入しました。 でも全然読んでません…。 てかもうこんなにまじめに読んだのにまた読む意味って無いよね…。
現在一般に理解されている Maxwell の電気力学を、運動している物体に対して当てはめると、 現象に固有の性質としては現れることのない非対称性が導かれます。 例をあげると、磁石と導体の間に相互に働く電気力学的な作用があります。 観測される現象は導体と磁石の相対的な運動にのみ依存するはずですが、それに反して、 一般的に考えられる見方、すなわちどちらの物体が動いているのかという二つの状況の間には明確な違いが現れます。 つまり、磁石が動いており導体が静止しているとき、磁石の周囲には電場とそれに伴うある一定のエネルギーが発生し、導体の置かれた場所では電流が発生します。 一方で磁石が静止しており、導体が動いているときには磁石の周囲には電場は発生しません。 しかし導体中では起電力が発生しますが、それに対応するエネルギーは存在しません。 ですが、いま議論している二つの状況における相対的な運動が等価であることを仮定するなら、 始めの状況で考えることのできた電気的な力により発生するのと同じ経路・同じ量の電流が誘起されるはずです。
上に挙げたような例と、"光の媒質"により地球に発生するであろ運動を観測するいかなる試みも失敗に終わってしまったことを考えると、 電気力学、およびそれと同様に力学における現象は、絶対静止系が存在するという考えに対応すると思われる性質を帯びていないことを暗示していると考えられます。 これらの事実はむしろ、すでに一次の微小量に対しては成り立つことが示されているように、力学の方程式が不変であるという意味で、 すべての観測系において同じ電気力学および光学の法則が成り立つことを指し示していると考えられます[3]。 これからはこの仮説 (この考え方をこれ以降は "相対性原理" と呼ぶことにします) を基本原理として採用します。 またこの基本原理とは表面上相反するもう一つの基本原理を採用します。 すなわち、光は、それを輻射する物体の運動状態に依らず、常に真空を一定の速さ $c$ で伝播するというものです。 これら二つの基本原理は、静止物体に対する Maxwell の理論に基づいた、簡潔で、矛盾のない電気力学の理論を構築するために十分なものです。 これから導入する概念が、特別な性質を持った "絶対静止空間" を必要としたり、電磁気学的な過程が起こっている真空中の場所に速度ベクトルを割り当てたりしないのと同様に、 "発光するエーテル" の導入は、不適切なものであることが証明されます。
これから導入しようとしている理論は、他のすべての電気力学と同様に、剛体の運動学に基づいています。 なぜならば、そのような理論の主張はすべて、剛体 (座標系) 、時計、および電磁気学的な過程の間の関係を取り扱わなければならないからです。 現在直面している、運動物体に対する電気力学の困難さの根底には、このような不十分な考え方があります。

[1]「いや、お前の英語力が貧弱なんじゃ」というツッコミは禁止の方向で
[2]ページ最下部参照
[3]この論文に先立つ Lorentz の研究成果は、このときにはまだ著者には知られていませんでした

1運動学に対する考察

1.1同時性の定義

Newton 力学の方程式が正しく成り立つような座標系を考えます[1]。 これから提示することをより明確に伝えるためであると同時に、この後に導入する別の座標系とこの座標系をあらわに区別できるように、 この座標系を "静止系" と呼ぶことにします。
もし質点がこの座標系に対して相対的に静止していれば、基準となる変形のない物差しで測り、 Euclid 幾何学の方法を用いてその位置を相対的に定義することができ、 デカルト座標で表現することができます。
質点の運動を記述したいときには、その座標値を時刻の函数として与えます。 ここで、このような数学的な記述は、 "時刻" というものをどのように理解するかということをはっきりと明確にしない限り、 物理的には何の意味も待たないことに注意しなければなりません。 観測に対して時刻が役割を果たすのは、事象が同時に起こるということを観測するときのみであることを考慮しなければなりません。 例えば「電車が 7 時にここに到着する」と言った場合には、「自分の時計の短針が 7 時を指すことと、電車がここに到着するという事象は同時に起こる」[2]というようなことを意味します。
"自分の腕時計の短針の位置" を "時刻" の定義として置き換えることで、 "時刻" の定義を得る際の困難な事柄をすべて克服できることが分かります。 そして実は、このような定義は、時計がどこにあるかということに依らずに時刻を定義することを考えると、 一貫したものであることが分かります。 しかし一方で、時刻のこのような定義は、異なった場所で起こる複数の事象を時刻に結びつけるとき、 もしくは同じことですが、時計から離れた場所で起こる事象の時刻を測る際には十分なものではなくなってしまいます。
時刻を計測したい事象が起きたときに輻射され、真空を伝播して観測者に届いた光信号に対応する時計の針の位置を用いて、 時計とともに座標の原点上に静止している観測者により時刻を決定することにすると私たちの要求は満たされるでしょう。 しかしこのような時刻の測り方は、経験から分かるように時計と観測者がいる位置に依存してしまうという欠点を持ちます。 そこで以下にあげるような、より実用的な定義にたどり着きました。
地点 A に時計があれば、地点 A にいる観測者は地点 A の付近で発生した事象の時刻の値を、 その事象と同時に時計の針が指し示していた位置をもとに決めることができます。 また同様に、地点 A と同じように地点 B に別の時計があった場合、 地点 B にいる観測者は地点 B のすぐ近くで起きた事象の時刻値を決定することができます。 しかし、より進んだ仮定を取り込まない限り、時刻という側面において事象 A と事象 B を互いに比較することは不可能です。 なぜならば、今までに定義をしたのは "A での時刻" と "B での時刻" のみであり、 A と B の間の共通の "時刻" というものを定義していないからです。 地点 A から B へと光が伝わる "時間" と、地点 B から A へと伝わる "時間" が同じであるということを、 定義によって確立しない限り、後者の共通の時刻というのは定義をすることができません。 そこで、 "A での時刻" $t_{\rm A}$ に光線が A から B に向かって発射され、 "B での時刻" $t_{\rm B}$ に地点 B で反射し地点 A に向かって跳ね返り、 そして再度、地点 A に "A での時刻" $t'_{\rm A}$ に到着することを考えます。
定義に従えば、二つの時計が同期されているというのは、
\begin{equation} t_{\rm B}-t_{\rm A}=t'_{\rm A}-t_{\rm B} \end{equation}
(1)
となっていることです。
ここでこの同期の定義には矛盾がないということを仮定します。 またこれはいかなる数の地点に対しても成り立ち、以下の関係が宇宙の至る所で成立していることを仮定します: ――
1. もし地点 B にある時計が地点 A にある時計と同期されていた場合には、地点 A にある時計は地点 B にある時計と同期されています。
2. もし地点 A にある時計が地点 B にある時計、および地点 C にある時計と同期していた場合には、地点 B にある時計と地点 C にある時計も互いに同期しています。
このようにいくつかの思考実験により、異なる位置に設置された互いに同期された静止している時計について理解すべき事柄を解決することができ、 "同時" "同期" "時刻" といった概念の定義を明白に得ることができました。 事象の "時刻" というものは、事象が起きた場所と同じ場所に設置されている、静止している時計に同時に起こっている事象によって与えられ、 またこの時計はある他の静止している時計と同期されており、そしてすべての時刻値と同期されています。
また実験から分かるように、
\begin{equation} \frac{2{\rm AB}}{t'_A-t_A}=c \end{equation}
(2)
という量 (真空における光速度) が、常に一定な定数であることを仮定します。
静止系上で静止している時計を用いて時刻を定義することは必要不可欠であり、 いま定義された、ある静止系に対して相応しいような時刻のことを "その静止系における時刻" と呼ぶことにします。

1.2長さと時刻の相対性

以下の考えは相対性の原理と、光速度不変の原理に基づいています。 以下のように二つの原理を定義します: ――
1. 物理系の状態の変更が、互いに一様な並進運動をしている二つの座標系のどちらにおける変更であろうとも、 物理法則はその変更に全く影響を受けません。
2. "静止" している座標系において進行する光線は、その光線が静止している物体から発射されたのか、 それとも運動している物体から発射されたのかにかかわらず、決められた速さ $c$ で進行します。 つまり、
光速度の定義式
ここで時間間隔は 1.1 節で定義されたものです。
静止している物差しによって測られた長さ $l$ をもつ静止した剛体棒を考えます。 そしてこの棒の軸が、静止している座標系の $x$ 軸と平行におかれており、 $x$ 軸の正の方向に速さ $v$ で並進運動をしていることを考えます。 その上で以下の二つの操作によって、この動いている棒の長さを測定することとします: ――
(a) 測定したい棒と与えられた物差しとともに観測者が動き、 棒の長さを物差しをあてがうことで直接、静止系での操作と全く同様に棒の長さを測定します。
(b) 1.1 節に従って同期済みの時計を静止系に静置し、その時計を用いて、 ある決められた時間に棒の両端が静止系のどの位置にあったかを測定します。 そしてこの二つの位置の距離を静止系にある物差しを用いて測定します。 この測定値は "棒の長さ" を表します。
相対性の原理に従うならば、(a) の操作で測定される長さ ("運動系での棒の長さ" と呼ぶことにします) は静止系での棒の長さ $l$ と同一であるはずです。
(b) の操作で測定される長さを "静止系における (動いている) 棒の長さ" と呼ぶことにします。 この長さは上にあげた二つの原理に従って決定を行いますが、これは $l$ とは異なるものであることが分かります。
現在の力学では、これら二つの操作で得られる長さは厳密に同じものであるということを暗に仮定しています。 別の言い方をすると、時刻 $t$ における動いている剛体棒の幾何学的様相は、 一定の場所に静止している同一の物体と完全に等しいということです。
また棒の端点 A, B には静止系の時計を用いて同期された時計が置かれており、 それらの時計が指し示す値はいついかなる瞬間においても "静止系における時刻" に対応していることを想定しています。 つまりこれらの時計は "静止系において同期されている" のです。
またこれらの時計にそれぞれ動いている観測者がおり、 それらの観測者たちが 1.1 節で確立された二つの時計の同期性をそれぞれの時計にあてはめることを考えます。 光線が A を時刻[3] $t_{\rm A}$ に出発し、時刻 $t_{\rm B}$ に B で反射し、そして時刻 $t'_{\rm A}$ に A に再び帰ってくることを考えます。 ここで光速度不変の原理を考慮すると、
\begin{equation} t_{\rm B}-t_{\rm A}=\frac{r_{\rm AB}}{c-v}\ {\rm and}\ t'_{\rm A}-t_{\rm B}=\frac{r_{\rm AB}}{c+v} \end{equation}
(3)
となります。 ここで $r_{\rm AB}$ は静止系で測られた、動いている棒の長さを表します。 そうすると動いている棒とともに動いている観測者にとって、二つの時計は同期されていないということになります。 一方で、静止系にいる観測者はこれらの時計は同期されていると主張するでしょう。
このようにして、同時性の概念に対していかなる絶対的な意味をもみいだすことができないことが分かります。 二つの事象は、ある一つの座標系からみたときには同時であっても、 その系に対して動いている系から観測された場合には必ずしも同時であるとはいえなくなります。

1.3静止系から、それに対して一様に運動する系への座標および時間の変換則

"静止している" 空間上において、二つの座標系、すなわち一つの点から三つの軸が出ており、 それらが互いに平行であるような二つの系を考えます。 X 軸は互いに一致し、Y 軸と Z 軸が互いに平行であるような場合を考えます。 それぞれの系において物差しといくつかの時計が与えられ、 それら二つの系にある物差しや時計はすべての側面において同質であるとします。
二つの系のうち一方の系 (k) の原点が $x$ 方向正の向きにもう一方の系 (K) に対して一定の速さ $v$ で動いており、 この速さは座標軸や物差し、時計に対しても同様であるとします。 静止系 K におけるいかなる時刻においても、動いている系の軸の位置を対応づけることができ、 また対称性から、k の運動に対して、時刻 $t$ (この "$t$" は常に静止系での時刻を表すことにします) において動いている系の軸と静止系の軸が平行になっているような仮定を置くことができます。
静止している物差しによって静止系 K から空間をはかることと、 動いている物差しによってそれと一緒に動いている系 k から空間をはかることを考えます。 このようにして座標 $x$, $y$, $z$ および $\xi$, $\eta$, $\zeta$ をそれぞれ得ることができます。 1.1 節で示された方法によって光線により同期された時計を用いて静止系上のすべての点で決定することのできる時刻 $t$ と、 それと同様に 1.1 節で与えられた方法を適用することで、動いている系に対して静止している、 光線により互いに同期させられた時計を用いてすべての点で決定することのできる時刻 $\tau$ を考えます。
静止系における事象の場所および時刻を完全に規定する変数の組 $x$, $y$, $z$, $t$ に対して、 対応する、系 k から事象をみたときの変数の組 $\xi$, $\eta$, $\zeta$, $\tau$ が存在します。 これ以降ではこれらの量を結びつける方程式の組を見つけることにします。
まず始めに、時空間に本質的に備わっていると思われる均一性から、 これらの方程式は線形でなければならないことが分かります。
$x'=x-vt$ とおくと、系 k 上で静止している点に対応する変数の組 $x'$, $y$, $z$ は時刻には依存しないことは明らかです。 始めに $\tau$$x'$, $y$, $z$ および $t$ の函数として定義しました。 このためには、 $\tau$ は 1.1 節で与えられたような規約に基づいて同期された、 系 k 上に静止する時計の値をとりまとめたものであることを、方程式として表さなければならないことが分かります。
時刻 $\tau_0$ に系 k の原点から光線が X 軸に沿って発射され、時刻 $\tau_1$$x'$ で反射し、 時刻 $\tau_2$ に座標の原点に到着することを考えます。 このとき、 $\frac{1}{2}(\tau_0+\tau_2)=\tau_1$ でなければなりませんが、 同時に、函数 $\tau$ の引数を入れて静止系における光速度不変の原理を適用することで以下の式を得ることができます: ――
\begin{equation} \frac{1}{2}\left[\tau(0,0,0,t)+\tau\left(0,0,0,t+\frac{x'}{c-v}+\frac{x'}{c+v}\right)\right]= \tau\left(x',0,0,t+\frac{x'}{c-v}\right) \end{equation}
(4)
従って、$x'$ を無限に小さくとると、
\begin{equation} \frac{1}{2}\left(\frac{1}{c-v}+\frac{1}{c+v}\right)\frac{\partial \tau}{\partial t}=\frac{\partial\tau}{\partial x'}+\frac{1}{c-v}\frac{\partial\tau}{\partial t} \end{equation}
(5)
すなわち、
\begin{equation} \frac{\partial\tau}{\partial x'}+\frac{v}{c^2-v^2}\frac{\partial\tau}{\partial t}=0 \end{equation}
(6)
ここで光線を発射する場所は原点以外の任意の場所をとることができるので、 上で得られた方程式は $x'$, $y$, $z$ の任意の値に対して成り立つことに注意しなければなりません。
同様の考えを Y 軸および Z 軸に当てはめることで以下の結論を得ることができます。 すなわち、 Y 軸および Z 軸に沿って伝播する光線は、 静止系から観測した場合には常に速さ $\sqrt{c^2-v^2}$[4]伝播するので、
\begin{equation} \frac{\partial\tau}{\partial y}=0, \frac{\partial\tau}{\partial z}=0 \end{equation}
(7)
が成り立つことが分かります。 $\tau$線形な函数ですので、これらの方程式から以下の式が結論されます。
\begin{equation} \tau=a\left(t-\frac{v}{c^2-v^2}x'\right) \end{equation}
(8)
ここで $a$ は現在のところ未知の函数 $\phi(v)$ であり、 また簡単のために k の原点では $t=0$ の時 $\tau=0$ となるように仮定します。
この結果を鑑みれば、動いている系で観測された場合でも光は (光速度不変の原理を相対性の原理と組み合わせることで要求されるように) 速度 $c$ で伝播することを式で表すことで、 変量 $\xi$, $\eta$, $\zeta$ を簡単に決定することができます。 時刻 $\tau=0$$\xi$ 方向正の向きに放出された光線に対して以下の式が成り立ちます。
\begin{equation} \xi=c\tau\ {\rm or}\ \xi=ac\left(t-\frac{v}{c^2-v^2}x'\right) \end{equation}
(9)
一方で、静止系からみたときには、光線が発射された位置に対して光線は、速さ $c-v$ で相対的に動いているので、
\begin{equation} \frac{x'}{c-v}=t. \end{equation}
(10)
この $t$ の値を $\xi$ に対する方程式に代入することで、
\begin{equation} \xi=a\frac{c^2}{c^2-v^2}x' \end{equation}
(11)
を得ます。 その他の軸に沿って発射された光線に対して同様の考察を与えることにより、
\begin{equation} \eta=c\tau=ac\left(t-\frac{v}{c^2-v^2}x'\right) \end{equation}
(12)
ただし、
\begin{equation} \frac{y}{\sqrt{c^2-v^2}}=t,\ x'=0 \end{equation}
(13)
です。 従って、
\begin{equation} \eta=a\frac{c}{\sqrt{c^2-v^2}}y\ {\rm and}\ \zeta=a\frac{c}{\sqrt{c^2-v^2}}z \end{equation}
(14)
を得ます。 $x'$ をもとの値で置き換えることで、
\begin{eqnarray*} \tau & = & \phi(v)\beta(t-vx/c^2), \\ \xi & = & \phi(v)\beta(x-vt), \\ \eta & = & \phi(v)y, \\ \zeta & = & \phi(v)z \\ \end{eqnarray*}
(15)
を得ます。 ただし、
\begin{equation} \beta = \frac{1}{\sqrt{1-v^2/c^2}} \end{equation}
(16)
とします[5]。 また $\phi$ は現在のところ未知の、$v$ の函数です。 動いている系の初期位置や $\tau$ の零値に対する仮定がなければ、 これらの方程式の右辺には付加的な定数が付け加わります。
さてここで、静止系ですべての光線が速さ $c$ で伝播するときに、 上の方で仮定したように動いている系でもこの光線は同じ速さ $c$ で伝播することを証明しなければなりません。 なぜならば、光速度不変の原理が相対性の原理と共存できるものであるという証明を未だに与えていなかったからです。
時刻が $t=\tau=0$ であり、互いの座標の原点が一致しているとき、 球面状の光波がその原点から輻射され、系 K 上で速さ $c$ で伝播していることを考えます。 $(x, y, z)$ がこの光波によりちょうど到達する地点であるとすれば、
\begin{equation} x^2+y^2+z^2=c^2t^2 \end{equation}
(17)
が成り立ちます。
この方程式を、上で得た変換則を与える方程式を用いて変形すると、 いくつかの簡単な計算の後、
\begin{equation} \xi^2+\eta^2+\zeta^2=c^2\tau^2 \end{equation}
(18)
を得ることができます。
いま考えている光波は動いている系からみても全く同様に速さ $c$ で伝播する球面状の波であり、 これは二つの基本原理が共存できるものであることを指し示しています[6]
いま導き出した変換則を与える方程式は、$v$ の未知函数 $\phi$ を含んでいるので、 これからこの未知函数を決定しましょう。
この目的のために、k に対して $\Xi$[7]に沿って速度 $-v$ で原点が並進運動をするような第三の系 K' を導入します。 時刻 $t=0$ には三つの系の原点はすべて一致しており、$t=x=y=z=0$ の時には系 K' の時刻は零であるとします。 系 K' で測られた座標を $x'$, $y'$, $z'$ とし、上で得た変換則を与える方程式を二重に適用することで、
\begin{equation} \begin{array}{lllll} t' & = & \phi(-v)\beta(-v)(\tau+v\xi/c^2) & = &\phi(v)\phi(-v)t,\\ x' & = & \phi(-v)\beta(-v)(\xi+v\tau) & = & \phi(v)\phi(-v)x,\\ y' & = & \phi(-v)\eta & = & \phi(v)\phi(-v)y,\\ z' & = & \phi(-v)\zeta & = & \phi(v)\phi(-v)z\\ \end{array} \end{equation}
(19)
を得ます。
ここで $x'$, $y'$, $z'$ および $x$, $y$, $z$ の間の関係には時刻 $t$ を含んでいませんから、 系 K と系 K' は互いに静止しています。 また明らかに系 K から K' への変換は恒等変換になるはずですから、
\begin{equation} \phi(v)\phi(-v)=1 \end{equation}
(20)
となります。 さてここで $\phi(v)$ についての意味を考えてみましょう。 系 k の軸 Y の一部、すなわち $\xi=0, \eta=0, \zeta=0$$\xi=0, \eta=l, \zeta=0$ の間について考えてみましょう。 この、 Y 軸の一部分は系 K に対して速さ $v$ で他の軸とは直交したまま動いていく棒とみることができます。 この棒の端点を K 上での座標で表すと、
\begin{equation} x_1=vt,\ y_1=\frac{l}{\phi(v)},\ z_1=0 \end{equation}
(21)
および、
\begin{equation} x_2=vt,\ y_2=0,\ z_2=0 \end{equation}
(22)
となります。 従って、系 K で測られた棒の長さは $l/\phi(v)$ となります。 これにより函数 $\phi(v)$ の意味が分かります。 対称性から、軸とは垂直に動いている棒の、静止系で測られた長さは速さにのみ依存し、 その運動方向や運動の仕方には依存してはいけないはずですので、 $v$$-v$ を互いに交換することを考えれば、静止系から測られた動いている棒の長さは変化してはいけません。 このことから $l/\phi(v)=l/\phi(-v)$ すなわち、
\begin{equation} \phi(v)=\phi(-v) \end{equation}
(23)
が分かります。 この関係式と、前に求めた関係式から $\phi(v)=1$ が分かるので、 以前に求めた変換則を与える方程式は、
\begin{eqnarray*} \tau & = & \beta(t-vx/c^2), \\ \xi & = & \beta(x - vt), \\ \eta & = & y, \\ \zeta & = & z \\ \end{eqnarray*}
(24)
となります。 ただし、
\begin{equation} \beta=1/\sqrt{1-v^2/c^2} \end{equation}
(25)
としています。

1.4動いている剛体と動いている時計に対する考察から得られた方程式系の物理的意味

k の原点と中心を同じにする、動いている系 k に対して静止している半径 $R$ の剛体球面[8]を考えましょう。 系 K に対して速さ $v$ で動いているこの球面を与える方程式は、
\begin{equation} \xi^2+\eta^2+\zeta^2=R^2 \end{equation}
(26)
なので、この球面を時刻 $t=0$$x$, $y$, $z$ を用いて表すと、
\begin{equation} \frac{x^2}{(\sqrt{1-v^2/c^2})^2}+y^2+z^2=R^2 \end{equation}
(27)
この剛体は静止しているときには球状をしていますが、運動をしているとき、今の場合でいうと静止系から見たときには、
\begin{equation} R\sqrt{1-v^2/c^2},\ R,\ R. \end{equation}
(28)
を軸とする回転楕円体をしています。
さてこのようにして、球面の (そして任意の形をしたいかなる剛体の) Y および Z 方向には運動により変更を受けませんが、 X 方向には $1:\sqrt{1-v^2/c^2}$ の割合で収縮する、もっというと、速さ $v$ が速くなれば速くなるほど短くなることが分かりました。 "静止"系から見た場合に $v=c$ となるようなすべての物体は、平らな形にしぼんでしまうことが分かります。 光速度よりも速いものに関しては以上の考察は意味をなしません。 しかしながら、光速度はこの理論において物理的に非常に重要な速度であることが分かります。
"静止" 系上で静止している物体を並進運動している系から見たときにも全く同じ結果が得られることは明らかです。
そこで静止系に対して静止しているときには、時刻 $t$ を刻むことができ、 動いている系に対して静止しているときには、時刻 $\tau$ を刻むことができる時計を考えます。 この時計が系 k の原点におかれており、時刻 $\tau$ を指すように調整されているとします。 この時計を静止系から見たときにはどのような割合で時を刻むでしょうか?
時計の位置を表す変量 $x$, $t$ そして $\tau$ の間には明らかに $x=vt$ および
\begin{equation} \tau=\frac{1}{\sqrt{1-v^2/c^2}}(t-vx/c^2). \end{equation}
(29)
が成り立ちます。 従って、
\begin{equation} \tau=t\sqrt{1-v^2/c^2}=t-(1-\sqrt{1-v^2/c^2})t \end{equation}
(30)
となります。 このことから、静止系から見た場合に時計が時間を刻む速さは一秒あたり $1-\sqrt{1-v^2/c^2}$ だけ遅くなることが分かります。 またこれは四次以降の微小量を落とすことで、 $\frac{1}{2}v^2/c^2$ と書くこともできます。
またこのことから以下の奇妙な結論を導くことができます。 静止系から見て同期された静止している時計が K 上の地点 A および B にあるとします。 そして地点 A にある時計を速さ $v$ で直線 AB に沿って B まで動かすことを考えると、 地点 B に到着したときにはもはや二つの時計は同期されていません。 地点 A から地点 B に動かされた時計は、 地点 B にあるもう一方の時計からは地点 A から地点 B まで動かしたときにかかった時間を $t$ とすると、 $\frac{1}{2}tv^2/c^2$ (四次の微小量までの近似) だけ遅れていることになります。
そしてこの結果は明らかに、時計を折れ線状の線に沿って動かしたときにも、 そして地点 A と地点 B が一致するときにも成り立つことが分かります。
また折れ線状の線に対して示された上の結果が、連続的な曲線に対しても同様に成り立つことを仮定すれば、 以下の結論を得ることができます: 地点 A にある互いに同期された二つの時計のうち一方が閉じた曲線上を一定の速さで地点 A に再び戻るまで動かしたとき、 動かすのに $t$ 秒だけかかったとすると、静止させたままの時計と一周して戻ってきた時計を比べると、 後者の方が $\frac{1}{2}tv^2/c^2$ だけ遅れているということになります。 従って、赤道上にある balance-clock (ぜんまい時計?)[9][10] は、北極または南極にある全く同じ状態の時計と比べて非常に少量だけ遅れることになります。

1.5速度の合成

系 K の X 軸に沿って速度 $v$ で動いている系 k において、以下の方程式に従って動く点を考えます。
\begin{equation} \xi=w_\xi \tau, \eta=w_\eta\tau, \zeta=0 \end{equation}
(31)
ここで $w_\xi$ および $w_\eta$ は定数とします。
必要なもの: 系 K に対する点の運動。 1.3 節で述べられた変換則を与える方程式によれば、変数 $x$, $y$, $z$, $t$ に対する運動方程式、
\begin{eqnarray*} x & = & \frac{w_\xi+v}{1+vw_\xi/c^2}t, \\ y & = & \frac{\sqrt{1-v^2/c^2}}{1+vw_\xi/c^2}w_\eta t, \\ z & = & 0 \\ \end{eqnarray*}
(32)
を得ることができます。
このようにして速度のベクトル合成則はいまの理論では第一近似において成り立つことが示されます[11]。 ここで、
\begin{eqnarray*} V^2 & = & \left(\frac{dx}{dt}\right)^2+\left(\frac{dy}{dt}\right)^2,\\ w^2 & = & w_\xi^2+w_\eta^2, \\ a & = & \tan^{-1} w_\eta/w_\xi \\ \end{eqnarray*}
(33)
とおきます[12]。 ただし $a$ は速度 $v$$w$ の張る角度とみることができることに注意します。 少々の計算を実行することで、
\begin{equation} V = \frac{\sqrt{(v^2+w^2+2vw\cos a)-(vw\sin a/c)^2}}{1+vw\cos a/c^2} \end{equation}
(34)
を得ます。 ここで対称性から、この式は速度 $v$$w$ の合成であることに注意します。 $w$ も X 軸方向を向いているとすると、
\begin{equation} V = \frac{v+w}{1+vw/c^2} \end{equation}
(35)
を得ます。 この方程式から以下のことが分かります。 すなわち、 $c$ よりも小さな二つの速度の合成は、常に $c$ よりも小さな速度になるということです。 $\kappa$$\lambda$ を正数かつ $c$ よりも小さな数として $v=c-\kappa$, $w=c-\lambda$ とすると、
\begin{equation} V = c\frac{2c-\kappa-\lambda}{2c-\kappa-\lambda+\kappa\lambda/c}
(36)
またその他にも、光速度 $c$ はそれよりも小さな速度を合成することにより値が変わることはないことが分かります。 このときには以下の式を得ます。
\begin{equation} V=\frac{c+w}{1+w/c}=c \end{equation}
(37)
1.3 節の二つの変換則を組み合わせることで、$v$$w$ が同じ方向を向いている場合の $V$ に関する公式を得ることができました。 1.3 節で想定した系 K および k に加えて、原点が $\Xi$[13] 軸に沿って k に対して速度 $w$ で平行に動いているような別の座標系 k' を導入すると、 変量 $x$, $y$, $z$, $t$ および k' 上のそれぞれに対応する変量との間の関係式を得ることができます。 そうして得られた式は、1.3 節で導かれた式と比べると、 "$v$" の位置が、
\begin{equation} \frac{v+w}{1+vw/c^2} \end{equation}
(38)
に置き換わっているだけのものであることが分かります。 このことから、このような平行変換は ― 必然として ― 群をなすことが分かります。
これで二つの基本原理に対応する必要不可欠な力学理論の法則を導いたわけですが、 これからは電気力学に対する応用を考えていきたいと思います。

[1]第一近似においては、ということを表します
[2]ここで、おおよそ同じ場所で二つの事象が起こったという同時性の概念の中に潜む不正確性は議論すべきではありません。 これはより抽象的な議論によってのみ取り除くことのできる事柄です
[3]ここで "時刻" は "静止系での時刻" すなわち "いまの議論で説明されている地点に置かれている動いている時計の針が指し示す場所" を表します
[4](訳者注) 動いている系で Y(Z) 軸に沿って伝播する光線を静止系からみると斜めに発射されたように見えるので、その光線の速度の Y(Z) 軸成分が $\sqrt{c^2-v^2}$ だという意味だと思います
[5](訳者注) 現在一般的にはこれは $\beta$ ではなく $\gamma$ と書かれます。$\beta$$\frac{v}{c}$ の意味として使われる場合がほとんどです
[6]Lorentz 変換の方程式は、$x^2+y^2+z^2=c^2t^2$ という関係式が結論として二番目の関係式 $\xi^2+\eta^2+\zeta^2=c^2\tau^2$ を持つという条件を直接利用することで、 より簡潔に導き出すことができます
[7](英語版編集者注) Einstein の原文では動いている系 $k$ の座標を表す記号として $(\Xi, H, Z)$ が明確に定義されることなく使用されていました。 1923 年の英語訳では $(X, Y, Z)$ が使用されており、 静止系 K での座標 X と、動いている系 k でのそれと平行な軸は曖昧に扱われていました。 しかしこれ以降では K に対して運動をしている系 k の軸として $\Xi$ を使うことにします。 なお、 1923 年の英語訳では系 K' のことはこれ以降では間違って "k" と書かれていました
[8]物体に対して静止している観測者から見た場合に球面状をしている物体のことを意味します
[9]振り子時計は地球に依存するような物理構造であり不適ですのでこの場合は除きます
[10](訳者注) balance-clock が何かよく分からなかったのですが、ググって出てきた写真を見る限りぜんまい時計のことっぽいです。 ご存じの方がおりましたらご一報を。 ちなみに現在ではクォーツ時計などがあるのでどうでも良いといえばどうでも良いのですが (^^;
[11](訳者注) $v \ll c$ として一次近似をすると $x=(w_\xi+v)t$, $y=w\eta t$, $z=0$ なのでこれは相対論以前の "普通の" 速度の合成法則 (Galilei 変換) と一致します
[12](英語版編集者注) 最後の方程式は Einstein の原文では間違って与えられており、 1923 年の英訳版では $a=\tan^{-1} w_y/w_x$ となっていました
[13](英語版編集者注) 1923 年の英訳版では "X" となっていました

2電気力学に対する考察

2.1真空中における Maxwell-Hertz 方程式の変換と、磁場中での運動により発生する起電力の摂理

静止系 K において、真空中では Maxwell-Hertz 方程式は厳密に成り立つことを仮定します。 そのもとでは、
\begin{equation} \renewcommand{\arraystretch}{2.5} \newcommand{\dd}[2]{\frac{\partial #1}{\partial #2}} \begin{array}{llllll} \displaystyle\frac{1}{c}\dd{X}{t} & = & \displaystyle\dd{N}{y} - \dd{M}{z}, & \displaystyle\frac{1}{c}\dd{L}{t} & = & \displaystyle\dd{Y}{z}-\dd{Z}{y}, \\ \displaystyle\frac{1}{c}\dd{Y}{t} & = & \displaystyle\dd{L}{z} - \dd{N}{x}, & \displaystyle\frac{1}{c}\dd{M}{t} & = & \displaystyle\dd{Z}{x}-\dd{X}{z}, \\ \displaystyle\frac{1}{c}\dd{Z}{t} & = & \displaystyle\dd{M}{x} - \dd{L}{y}, & \displaystyle\frac{1}{c}\dd{N}{t} & = & \displaystyle\dd{X}{y}-\dd{Y}{x} \\ \end{array} \end{equation}
(39)
が成り立ちます。 ここで $(X, Y, Z)$ は電気的な力、$(L, M, N)$ は磁気的な力のベクトルを表します。
1.3 節で導入した変換則を与える方程式を適用し、速度 $v$ で運動する座標系での電磁気学的過程を考察することで、
\begin{equation} \newcommand{\dd}[2]{\frac{\partial #1}{\partial #2}} \renewcommand{\arraystretch}{2.5} \begin{array}{rcll} \displaystyle\frac{1}{c}\dd{X}{\tau} & = & \displaystyle\dd{}{\eta}\left\{\beta\left({N}-\frac{v}{c}{Y}\right)\right\} & \displaystyle-\dd{}{\zeta}\left\{\beta\left({M}+\frac{v}{c}{Z}\right)\right\}, \\ \displaystyle\frac{1}{c}\dd{}{\tau}\left\{\beta\left({Y}-\frac{v}{c}{N}\right)\right\} & = & \displaystyle\dd{L}{\xi} & \displaystyle- \dd{}{\zeta}\left\{\beta\left({N}-\frac{v}{c}{Y}\right)\right\}, \\ \displaystyle\frac{1}{c}\dd{}{\tau}\left\{\beta\left({Z}+\frac{v}{c}{M}\right)\right\} & = & \displaystyle\dd{}{\xi}\left\{\beta\left({M}+\frac{v}{c}{Z}\right)\right\} & \displaystyle- \dd{L}{\eta}, \\ \displaystyle\frac{1}{c}\dd{L}{\tau} & = & \displaystyle\dd{}{\zeta}\left\{\beta\left({Y}-\frac{v}{c}{N}\right)\right\} & \displaystyle- \dd{}{\eta}\left\{\beta\left({Z}+\frac{v}{c}{M}\right)\right\}, \\ \displaystyle\frac{1}{c}\dd{}{\tau}\left\{\beta\left({M}+\frac{v}{c}{Z}\right)\right\} & = & \displaystyle\dd{}{\xi}\left\{\beta\left({Z}+\frac{v}{c}{M}\right)\right\} & \displaystyle-\dd{X}{\zeta}, \\ \displaystyle\frac{1}{c}\dd{}{\tau}\left\{\beta\left({N}-\frac{v}{c}{Y}\right)\right\} & = & \displaystyle\dd{X}{\eta} & \displaystyle- \dd{}{\xi}\left\{\beta\left({Y}-\frac{v}{c}{N}\right)\right\} \\ \end{array} \end{equation}
(40)
を得ます。 ここで、
\begin{equation} \beta = 1/\sqrt{1-v^2/c^2} \end{equation}
(41)
です。
さてここで相対性の原理から、真空上で Maxwell-Hertz 方程式が系 K で成り立つのならば、 系 k でも同様に成り立つはずです。 これはつまり、電気的、もしくは磁気的な質量に対して働くようなポンデロモーティブ効果として定義される、 動いている系 k での電気的、もしくは磁気的な力のベクトル $(X', Y', Z')$ および $(L', M', N')$ は以下の方程式を満たすということです: ――
\begin{equation} \newcommand{\dd}[2]{\frac{\partial #1}{\partial #2}} \newcommand{\ic}{\frac{1}{c}} \renewcommand{\arraystretch}{2.5} \begin{array}{cccccc} \displaystyle\ic\dd{X'}{\tau} & = & \displaystyle\dd{N'}{\eta}-\dd{M'}{\zeta}, & \displaystyle\ic\dd{L'}{\tau} & = & \displaystyle\dd{Y'}{\zeta} - \dd{Z'}{\eta}, \\ \displaystyle\ic\dd{Y'}{\tau} & = & \displaystyle\dd{L'}{\zeta}-\dd{N'}{\xi}, & \displaystyle\ic\dd{M'}{\tau} & = & \displaystyle\dd{Z'}{\xi} - \dd{X'}{\zeta}, \\ \displaystyle\ic\dd{Z'}{\tau} & = & \displaystyle\dd{M'}{\xi}-\dd{L'}{\eta}, & \displaystyle\ic\dd{N'}{\tau} & = & \displaystyle\dd{X'}{\eta} - \dd{Y'}{\xi} \\ \end{array} \end{equation}
(42)
系 K における Maxwell-Hertz 方程式においては二つの方程式系は同一のものですから、 系 k におけるこれら二つの方程式系は厳密に同一のものを表現していなければならないことは明白です。 従って、ベクトルの文字を除いて二つの方程式系は同一でなければならないので、 これら方程式系において互いに対応する部分の函数は $\psi(v)$ という、 一つの方程式系においてはすべての函数に対して共通の因子を除いて一致していなければなりません。 またこの因子は、$\xi$, $\eta$, $\zeta$ および $\tau$ には非依存であり、$v$ にのみ依存してもいいものです。 従って、
\begin{equation} \begin{array}{cclccl} X' & = & \psi(v)X, & L' & = & \psi(v)L, \\ Y' & = & \psi(v)\beta\left(Y-\frac{v}{c}N\right), & M' & = & \psi(v)\beta\left(M+\frac{v}{c}Z\right), \\ Z' & = & \psi(v)\beta\left(Z+\frac{v}{c}M\right), & N' & = & \psi(v)\beta\left(N-\frac{v}{c}Y\right) \\ \end{array} \end{equation}
(43)
という関係式系を得ます。
次にこの方程式系を逆にしたものを、まず始めにいま得られた方程式を解くことで、 第二に、方程式を (k から K への) 速度 $-v$ で特徴付けられる逆変換にあてはめることで得られる二つの方程式系が同一のものでなければならないことを考慮すれば、 $\psi(v)\psi(-v)=1$ が結論されます。 さらに対称性[1]を考慮することで、
\begin{equation} \psi(v)=1 \end{equation}
(44)
従って上の方程式は、
\begin{equation} \begin{array}{cclccl} X' & = & X, & L' & = & L, \\ Y' & = & \beta\left(Y-\frac{v}{c}N\right), & M' & = & \beta\left(M+\frac{v}{c}Z\right), \\ Z' & = & \beta\left(Z+\frac{v}{c}M\right), & N' & = & \beta\left(N-\frac{v}{c}Y\right) \\ \end{array} \end{equation}
(45)
という形になります。
これらの方程式についての解釈として、以下の所感を付しておきます: 静止系 K において測定された "単位" 電荷を持った、すなわち静止系において静止している、 等量の電荷を持った点電荷が 1cm 離れた場所にあったときに 1dyne の力を及ぼすような電荷量を持った点電荷を考えます。 相対性の原理から、この電荷は動いている系から測定されたとしても、同じ "単位" 電荷を持っています。 この量の電荷が静止系に対して静止しているときには定義からベクトル $(X, Y, Z)$ はその電荷に働いている力と同一です。 一方でこの量の電荷が動いている系に対して静止している (少なくともある期間内では) 場合には動いている系から測られた、 その電荷に働いている力はベクトル $(X', Y', Z')$ と同一になります。 従って上のはじめの三つの方程式は言葉では以下の二つのように言い表せることを示しています: ――
1. 単位電荷を持った点電荷が電磁場中で運動しているときには電気的な力に加えて、 $v/c$ の二次以降の項を無視するならば電荷の速度と磁気的な力とのベクトル積を光速度で割ったものにに等しい、 "起電力" が加わる (古い言い表し方)
2. 単位電荷を持った点電荷が電場中で運動しているときには、それに働く力は、 場の、電荷に対して静止しているような座標系への変換により得られた、 電荷の周りに局所的に存在する電気的な力に等しい (新しい言い表し方)
類推は "起磁力" に対しても成り立ちます。 起電力は、いままでに発展してきた理論の中では、その導入が座標系の運動状態に非依存には電気的、 あるいは磁気的な力が存在しないという周辺事情に依拠する補助的な概念の単に一部を演じているにすぎないことをみました。
またその上、冒頭で述べた、磁石と導体の相対的な運動により発生する電流を考えるときに生じた非対称性はすでに消え去ってしまったことは明らかです。 さらに電気力学的な起電力 (Faraday の単極発電機) の "源" がどこにあるのかという疑問は意味をなさなくなってしまいました。

2.2Doppler の原理と光行差の理論

系 K において原点から遠く離れた場所に電磁波の発生源があり、 原点を含むある領域中では十分な近似精度で、
\begin{equation} \begin{array}{ll} X = X_0\sin\Phi, & L = L_0\sin\Phi, \\ Y = Y_0\sin\Phi, & M = M_0\sin\Phi, \\ Z = Z_0\sin\Phi, & N = N_0\sin\Phi \\ \end{array} \end{equation}
(46)
と表せるときを考えます。 ただし、
\begin{equation} \Phi=\omega\left\{t-\frac{1}{c}(lx+my+nz)\right\} \end{equation}
(47)
とします。 ここで $(X_0, Y_0, Z_0)$ および $(L_0, M_0, N_0)$ は波列の方向を決めるベクトルであり、 $l, m, n$ は波面の法線の方向余弦です。 この電磁波を動いている系 k 上で静止している観測者から観測したときの性質について考えたいと思います。
2.1 節で導いた電気的および磁気的な力に関する方程式と 1.3 節で導いた座標と時間に関する方程式を適用することで直接、
\begin{equation} \begin{array}{ll} X' = X_0\sin\Phi', & L' = L_0\sin\Phi', \\ Y' = \beta(Y_0-vN_0/c)\sin\Phi', & M' = \beta(M_0+vZ_0/c)\sin\Phi', \\ Z' = \beta(Z_0+vM_0/c)\sin\Phi', & N' = \beta(N_0-vY_0/c)\sin\Phi', \\ \Phi'= \omega'\left\{\tau-\frac{1}{c}(l'\xi+m'\eta+n'\zeta)\right\} \\ \end{array} \end{equation}
(48)
を得ることができます。 ただし、
\begin{eqnarray*} \omega' & = & \omega\beta(1-lv/c), \\ l' & = & \frac{l-v/c}{1 - lv/c}, \\ m' & = & \frac{m}{\beta(1-lv/c)}, \\ n' & = & \frac{n}{\beta(1-lv/c)} \\ \end{eqnarray*}
(49)
とします。
振動数 $\nu$ をもつ、無限に離れた光源に対して速度 $v$ で観測者が動いているとき、 "観測者-光源" を結ぶ直線と、光源に対して静止している座標系に対する観測者の速度がなす角を $\phi$ としたとき、 $\omega'$ に対する方程式から観測者が受け取る光線の振動数 $\nu'$ は、
\begin{equation} \nu' = \nu\frac{1-\cos\phi\cdot v/c}{\sqrt{1-v^2/c^2}} \end{equation}
(50)
で与えられます。 これはいかなる速度に対しても成り立つ、 Doppler の原理です。 $\phi=0$ とするとこの方程式はより簡潔に、
\begin{equation} \nu'=\nu\sqrt{\frac{1-v/c}{1+v/c}} \end{equation}
(51)
という形になります。 これとは対照的に $v=-c$ とすると、慣例的には $\nu'=\infty$ となります。
動いている系での波面の法線 (光線の進行方向) と "光源-観測者" を結ぶ直線との間の角度を $\phi'$ とすると、 $\phi'$[2] に対する方程式は、
\begin{equation} \cos\phi'=\frac{\cos\phi-v/c}{1-\cos\phi\cdot v/c} \end{equation}
(52)
という形になります。 この方程式は光行差の法則のもっとも一般的な形を与えています。 $\phi=\frac{1}{2}\pi$ とすると、方程式はより簡潔に、
\begin{equation} \cos\phi'=-v/c \end{equation}
(53)
となります。
次に動いている系からみたときの波の振幅を導出しましょう。 静止系、および動いている系から計測された、電気的、あるいは磁気的な力の振幅をそれぞれ $A$ および $A'$ と呼ぶことにすると、
\begin{equation} A'^2=A^2\frac{(1-\cos\phi\cdot v/c)^2}{1-v^2/c^2} \end{equation}
(54)
を得ます。 ここで $\phi=0$ とするとより簡潔に、
\begin{equation} A'^2=A^2\frac{1-v/c}{1+v/c} \end{equation}
(55)
となります。
この結果から、速度 $c$ で光源に近づいている観測者にとっては、光源の強度は無限大でなければならないことが分かります。

2.3光線のエネルギー変換と、完全反射体に働く輻射圧力の理論

$A^2/8\pi$ は単位体積あたりの光のエネルギーに等しいので、 相対性の原理から $A'^2/8\pi$ は動いている系における光のエネルギーだということに注意しなければなりません。 従って、 $A'^2/A^2$ は、 K においても k においても複合光の体積が同じであれば、 "動いている系から測られた複合光のエネルギー" と "静止している系から測られた複合光のエネルギー" の比であることが分かります。 しかし実はそうではないことが分かります。 $l, m, n$ を静止系における光の波面の法線の方向余弦とすると、 光速度で動く以下の球面上の面要素からはエネルギーの流出はありません: ――
\begin{equation} (x-lct)^2+(y-mct)^2+(z-nct)^2=R^2 \end{equation}
(56)
この面は永久に同一の複合光を取り囲んでいる、ということができます。 系 k からみたときにこの面に取り囲まれているエネルギー量、 すなわち系 k に対する複合光のエネルギーについて調べてみましょう。
動いている系から球面をみると、時刻 $\tau=0$ には以下の方程式で表せるような楕円状の面に見えます:
\begin{equation} (\beta\xi-l\beta\xi v/c)^2+(\eta-m\beta\xi v/c)^2+(\zeta-n\beta\xi v/c)^2=R^2 \end{equation}
(57)
$S$ を球の体積、 $S'$ をこの楕円体の体積とすると、簡単な計算から、
\begin{equation} \frac{S'}{S}=\frac{\sqrt{1-v^2/c^2}}{1-\cos\phi\cdot v/c} \end{equation}
(58)
を得ます。 静止系から測定された、この面により囲まれている部分の光のエネルギーを $E$ とし、 動いている系から測定されたものを $E'$ とすると、
\begin{equation} \frac{E'}{E} = \frac{{A'}^2{S'}}{{A}^2{S}} = \frac{1-\cos\phi\cdot v/c}{\sqrt{1-v^2/c^2}} \end{equation}
(59)
を得ます。 またこの公式は $\phi=0$ のときにはより簡単に、
\begin{equation} \frac{E'}{E} = \sqrt{\frac{1-v/c}{1+v/c}} \end{equation}
(60)
となります。
複合光のエネルギーおよび振動数が観測者の運動状態によって、 全く同じ法則に従って変化するということは注目に値します。
続いて、$\xi=0$ 座標平面が完全反射表面、すなわち 2.2 節で考察した平面波が反射するような平面を考えます。 この反射表面に光が及ぼす圧力および、反射後の光の伝播方向、周波数、強さを求めていきましょう。
入射光を変量 $A$, $\cos\phi$, $\nu$ (系 K でみた量) として定義すると、 k からみた場合のそれぞれに対応する変量は、
\begin{eqnarray*} A' & = & A\frac{1-\cos\phi\cdot v/c}{\sqrt{1-v^2/c^2}}, \\ \cos\phi' & = & \frac{\cos\phi-v/c}{1-\cos\phi\cdot v/c}, \\ \nu' & = & \nu\frac{1-\cos\phi\cdot v/c}{\sqrt{1-v^2/c^2}} \\ \end{eqnarray*}
(61)
となります。 系 k での過程を考えれば、反射光に対して、
\begin{eqnarray*} A'' & = & A' \\ \cos\phi'' & = & -\cos\phi' \\ \nu'' & = & \nu' \\ \end{eqnarray*}
(62)
を得ます。 最後に静止系 K への変換をすることで引き戻してあげると、反射光に対して、
\begin{eqnarray*} A''' & = & A''\frac{1+cos\phi''\cdot v/c}{\sqrt{1-v^2/c^2}} = A\frac{1-2\cos\phi\cdot v/c+v^2/c^2}{1-v^2/c^2}, \\ \cos\phi''' & = & \frac{\cos\phi''+v/c}{1+\cos\phi''\cdot v/c} = -\frac{(1 + v^2/c^2)\cos\phi-2v/c}{1-2\cos\phi\cdot v/c+v^2/c^2}, \\ \nu''' & = & \nu''\frac{1+\cos\phi''\cdot v/c}{\sqrt{1-v^2/c^2}} = \nu\frac{1-2\cos\phi\cdot v/c+v^2/c^2}{1-v^2/c^2} \\ \end{eqnarray*}
(63)
を得ます。
単位時間あたりに鏡の単位面積に入射した光の (静止系で測定された) エネルギーは明らかに $A^2(c\cos\phi-v)/8\pi$ です。 一方、単位時間あたりに鏡の単位面積から反射した光のエネルギーは $A'''^2(-c\cos\phi'''+v)/8\pi$ となります。 この二つの表式の違いは、エネルギーの基本原理に基づけば、単位時間あたりに光から受け取った圧力による仕事を表しています。 この仕事を、 $P$ を光圧として、積 $Pv$ と等しいと書き表すこととすると、
\begin{equation} P=2\cdot\frac{A^2}{8\pi}\frac{(\cos\phi-v/c)^2}{1-v^2/c^2} \end{equation}
(64)
を得ます。 いくつかの他の理論や、実験によれば、第一近似として、
\begin{equation} P=2\cdot\frac{A^2}{8\pi}\cos^2\phi \end{equation}
(65)
を得ます。
運動物体に対する光学の問題はすべて、ここで取り上げた方法を用いることで解くことができます。 ここで本質的となっているのは、運動物体に作用する光の電気的または磁気的な力は、 その物体に対して静止している座標系へ移して考えなければならないということです。 この手法にのっとれば、運動物体に対する光学上のすべての問題は、 静止物体に対する光学の問題に分割することができます。

2.4対流電流を考慮した場合の Maxwell-Hertz 方程式の変換則

まずは以下の方程式から始めたいと思います。
\begin{equation} \newcommand{\dd}[2]{\frac{\partial #1}{\partial #2}} \newcommand{\ic}{\frac{1}{c}} \renewcommand{\arraystretch}{2.5} \begin{array}{cccccc} \displaystyle\ic\left\{\dd{X}{t}+u_x\rho\right\} & = & \displaystyle\dd{N}{y} - \dd{M}{z}, & \displaystyle\ic\dd{L}{t} & = & \displaystyle\dd{Y}{z} - \dd{Z}{y}, \\ \displaystyle\ic\left\{\dd{Y}{t}+u_y\rho\right\} & = & \displaystyle\dd{L}{z} - \dd{N}{x}, & \displaystyle\ic\dd{M}{t} & = & \displaystyle\dd{Z}{x} - \dd{X}{z}, \\ \displaystyle\ic\left\{\dd{Z}{t}+u_z\rho\right\} & = & \displaystyle\dd{M}{x} - \dd{L}{y}, & \displaystyle\ic\dd{N}{t} & = & \displaystyle\dd{X}{y} - \dd{Y}{x} \\ \end{array} \end{equation}
(66)
ただしここで、
\begin{equation} \newcommand{\dd}[2]{\frac{\partial #1}{\partial #2}} \rho=\dd{X}{x}+\dd{Y}{y}+\dd{Z}{z} \end{equation}
(67)
は電荷密度の $4\pi$ 倍であり、 $(u_x,u_y,u_z)$ は電荷の速度ベクトルを表しています。 電荷は常に小さな剛体 (イオン、電子) に結びついているとするならば、 これらは Lorentz の電磁気学の原理や運動物体に対する光学の方程式となっています。
これらの方程式が系 K において、また、 それを 1.3 節および 2.1 節で得た変換則を与える方程式により系 k に対するものに変換したものの両者に対して正しく成り立っているとします。 すると以下の方程式を得ることができます。
\begin{equation} \renewcommand{\arraystretch}{2.5} \newcommand{\dd}[2]{\frac{\partial #1}{\partial #2}} \newcommand{\ic}{\frac{1}{c}} \begin{array}{cccccc} \displaystyle\ic\left\{\dd{X'}{\tau}+u_\xi\rho'\right\} & = & \displaystyle\dd{N'}{\eta} - \dd{M'}{\zeta}, & \displaystyle\ic\dd{L'}{\tau} & = & \displaystyle\dd{Y'}{\zeta} - \dd{Z'}{\eta}, \\ \displaystyle\ic\left\{\dd{Y'}{\tau}+u_\eta\rho'\right\} & = & \displaystyle\dd{L'}{\zeta} - \dd{N'}{\xi}, & \displaystyle\ic\dd{M'}{\tau} & = & \displaystyle\dd{Z'}{\xi} - \dd{X'}{\zeta}, \\ \displaystyle\ic\left\{\dd{Z'}{\tau}+u_\zeta\rho'\right\} & = & \displaystyle\dd{M'}{\xi} - \dd{L'}{\eta}, & \displaystyle\ic\dd{N'}{\tau} & = & \displaystyle\dd{X'}{\eta} - \dd{Y'}{\xi} \\ \end{array} \end{equation}
(68)
ただし、
\begin{eqnarray*} u_\xi & = & \frac{u_x-v}{1-u_xv/c^2}, \\ u_\eta & = & \frac{u_y}{\beta(1-u_xv/c^2)}, \\ u_\zeta & = & \frac{u_z}{\beta(1-u_xv/c^2)} \\ \end{eqnarray*}
(69)
および、
\begin{eqnarray*} \rho' & = & \frac{\partial X'}{\partial \xi}+\frac{\partial Y'}{\partial \eta}+\frac{\partial Z'}{\partial \zeta} \\ & = & \beta(1-u_xv/c^2)\rho \end{eqnarray*}
(70)
とします。 速度の合成の定理 (1.5 節) から、ベクトル $(u_\xi, u_\eta, u_\zeta)$ は系 k で測られた電荷の速度にすぎないことが分かりますから、 ここでの運動学的な原理に従えば、電気力学の礎となっている Lorentz の運動物体に対する電磁気学の理論は、相対性の原理と整合性がとれていることが証明されました。
またそれに付け加えて以下のような重要な法則がいま得られた方程式から簡単に帰結されることを手短に述べておきます: 電荷を与えられた物体が、物体と一緒に動いている座標系からみたときおいては電荷が不変となるように空間中を運動しているとき、 それを "静止" 系 K からみたとしてもその電荷は定数となります。

2.5緩い加速を行っている電子の運動学

電気を帯びた粒子 (以下では "電子" とかきます) が電磁場中を動いていることを考え、 この運動法則に対して以下の仮定をおきます: ――
ある瞬間において電子が静止しており、その次の瞬間の運動は以下の方程式に従って決定されることとします。
\begin{eqnarray*} m\frac{d^2x}{dt^2} & = & \epsilon X \\ m\frac{d^2y}{dt^2} & = & \epsilon Y \\ m\frac{d^2z}{dt^2} & = & \epsilon Z \\ \end{eqnarray*}
(71)
ただしここで $x, y, z$ は電子の座標であり、 $m$ は運動が遅い場合の電子の質量です。
そして続いて、ある瞬間において電子の速度が $v$ であった場合を考えます。 その次の瞬間の電子の運動法則を考えます。
このときに電子が座標の原点にあり、速度 $v$ で系 K 上の X 軸に沿って動いているという仮定をおいても何ら本質的には変わりはありません。 すると、この瞬間 ($t=0$) には、速度 $v$ で X 軸に沿って並進運動をしている座標系に対して電子は静止していることは明らかです。
上の仮定と相対性の原理を組み合わせることで、系 k からみた場合にはその次の瞬間には (小さな $t$ の値に対しては) 以下の方程式に従って運動することは明らかです。
\begin{eqnarray*} m\frac{d^2\xi}{d\tau^2} & = & \epsilon X', \\ m\frac{d^2\eta}{d\tau^2} & = & \epsilon Y', \\ m\frac{d^2\zeta}{d\tau^2} & = & \epsilon Z' \\ \end{eqnarray*}
(72)
ここで文字 $\xi$, $\eta$, $\zeta$, $X'$, $Y'$, $Z'$ は系 k 上での値であることを表しています。 ここで $t=x=y=z=0$ のときには $\tau=\xi=\eta=\zeta=0$ であり、 1.3 節および 2.1 節での変換式が成り立つとするならば、
\begin{equation} \begin{array}{c} \xi = \beta(x-vt), \eta=y, \zeta=z, \tau=\beta(t-vx/c^2),\\ X' = X, Y'=\beta(Y-vN/c), Z'=\beta(Z+vM/c)\\ \end{array} \end{equation}
(73)
を得ます。
これらの方程式を用いて上の運動方程式を系 k から系 K への変換を行うと、
\begin{equation} \begin{array}{rcl} \displaystyle\frac{d^2x}{dt^2} & = & \displaystyle\frac{\epsilon}{m\beta^3}X \\ \displaystyle\frac{d^2y}{dt^2} & = & \displaystyle\frac{\epsilon}{m\beta}\left(Y-\frac{v}{c}N\right) \\ \displaystyle\frac{d^2z}{dt^2} & = & \displaystyle\frac{\epsilon}{m\beta}\left(Z+\frac{v}{c}M\right) \\ \end{array} \end{equation}
(74)
を得ます。
通常の見方を得るために、運動電子の "たて" 質量と "よこ" 質量というものを考えます。 方程式 (74) を、
\begin{equation} \renewcommand{\arraystretch}{2} \begin{array}{lllll} \displaystyle m\beta^3\frac{d^2x}{dt^2} & = & \displaystyle\epsilon X & = & \epsilon X', \\ \displaystyle m\beta^2\frac{d^2y}{dt^2} & = & \displaystyle\epsilon\beta\left(Y-\frac{v}{c}N\right) & = & \epsilon Y', \\ \displaystyle m\beta^2\frac{d^2z}{dt^2} & = & \displaystyle\epsilon\beta\left(Z+\frac{v}{c}M\right) & = & \epsilon Z' \\ \end{array} \end{equation}
(75)
と変形します。 ここで $\epsilon X'$, $\epsilon Y'$, $\epsilon Z'$ は、 電子と同じ速度でその瞬間に電子とともに動く系からみたときの電子に働くポンデロモーティブ力の成分であるということを先に注意しておきます。 (この力は、例えば、最後に述べた系上に静止しているバネばかりによって測ることができるでしょう) それではここでこの力を単に "電子に働いている力"[3] と呼ぶことにし、 加速度は静止系 K から測るものとして方程式 ― 質量 × 加速度 = 力 ― を考えると、 上の方程式から、
「たて質量」および「よこ質量」
が導かれます。
力や加速度に対して違う定義を導入すれば、質量の値は自然に異なるものとなるでしょう。 従ってこれは、電子の運動に対する違う理論を比較する場合にはとても用心深く考察をしなければならないということを示しています。
質量を持つ質点は、どんなに小さいとしても (いまの言い方でいえば) 電荷を付け加えることで、 電子として取り扱うことができるので、 これらの結果は質量を持つ質点においても成り立つことに注意します。
それではここで電子の力学的エネルギーを計算してみましょう。 電子が系 K の X 軸上を沿って、静電場から受ける力 $X$ により静止状態から動き始めたとします。 すると静電場から得たエネルギーの値は明らかに $\int\epsilon X\,dx$ で与えられます。 電子は緩い加速を行っているので、輻射の形ではいかなるエネルギーも散逸しません。 従って、静電場から受け取ったエネルギーは電子の運動エネルギー $W$ として保存していなければなりません。 いま考えている全運動過程において方程式 (74) の一番目の式をあてはめることで、
\begin{eqnarray*} W & = & \int\epsilon X\,dx = m\int_0^v\beta^3v\,dv\\ & = & mc^2\left\{\frac{1}{\sqrt{1-v^2/c^2}}-1\right\} \\ \end{eqnarray*}
(76)
を得ます。
従って $v=c$ のときには $W$ は無限大になり、 光速度よりも速い速度は、前の結果に基づけば、存在することが許されないことが分かります。
この力学的エネルギーの表式は、引数の取り方の効力により、質量を持つ物体に対しても成り立たなければならないことが分かります。
実験により検証可能な、方程式系 (74) により示された、電子の運動の性質を列挙していきたいと思います。
1. 方程式系 (74) の二番目の式から速さ $v$ で動いている電子に働く、 電気的な力 $Y$ と磁気的な力 $N$ が電子の軌道を逸らす力 (deflexion) の強さは $Y=Nv/c$ のときに同じ強さをもちます。 従って $A_m$ を磁場による軌道を逸らす力の強さとし、 $A_e$ を電場による軌道を逸らす力の強さとすると、 どんな速度に対しても、
\begin{equation} \frac{A_m}{A_e}=\frac{v}{c} \end{equation}
(77)
という法則を適用することで、ここでの理論に従って電子の速度を決定することができます。
電子の速度は例えば電場と磁場を高速に振動させるなどの手法により、直接的に測定することができますから、 この関係式は実験によって確かめることが可能です。
2. 電子の力学的エネルギーの帰結から、ポテンシャルの差異と、電子の得た速度 $v$ との間には以下の関係が成り立ちます。
\begin{equation} P=\int Xdx = \frac{m}{\epsilon}c^2\left\{\frac{1}{\sqrt{1-v^2/c^2}}-1\right\} \end{equation}
(78)
磁気的な力 $N$ が (軌道を逸らす力としてのみ) 存在し、電子の速度とは垂直に働いていたときの電子の軌道の曲率半径を計算します。 方程式 (74) の二番目の式から、
\begin{equation} -\frac{d^2y}{dt^2}=\frac{v^2}{R}=\frac{\epsilon}{m}\frac{v}{c}{N}\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}} \end{equation}
(79)
すなわち、
\begin{equation} R = \frac{mc^2}{\epsilon}\cdot\frac{v/c}{\sqrt{1-v^2/c^2}}\cdot\frac{1}{N} \end{equation}
(80)
が得られます。
これら三つの関係式は、ここで述べられた理論のもとでは、電子が動くときには従わなければならない法則の完全な表現です。
最後に、ここで取り上げた問題に取り組んでいる際に誠実な支援をいただいた、同僚であり、 親友でもある M. Besso には、 いくつもの貴重な提案をいただき、非常に感謝していることを述べておきたいと思います。

※ 以下は英語版編集者が付したものです。訳すほどでもないのでそのまま載せておきます
About this Document

This edition of Einstein's On the Electrodynamics of Moving Bodies is based on the English translation of his original 1905 German-language paper (published as Zur Elektrodynamik bewegter Körper, in Annalen der Physik. 17:891, 1905) which appeared in the book The Principle of Relativity, published in 1923 by Methuen and Company, Ltd. of London. Most of the papers in that collection are English translations from the German Das Relativatsprinzip, 4th ed., published by in 1922 by Tuebner. All of these sources are now in the public domain; this document, derived from them, remains in the public domain and may be reproduced in any manner or medium without permission, restriction, attribution, or compensation[4].
Numbered footnotes are as they appeared in the 1923 edition; editor's notes are marked by a dagger (†) and appear in sans serif type[5]. The 1923 English translation modified the notation used in Einstein's 1905 paper to conform to that in use by the 1920's; for example, $c$ denotes the speed of light, as opposed the $V$ used by Einstein in 1905.This edition was prepared by John Walker. The current version of this document is available in a variety of formats from the editor's Web site:

[1]例えば $X=Y=Z=L=M=0$ であり $M \ne 0$ であるときには、対称性から $v$ が値を変えずにその符号のみを変えた場合には $Y'$ も同様に値を変えずに符号のみ変わらなければならないことは明らかです
[2](英語版編集者注) 文字を変更したにもかかわらず 1905 年の原文の間違えを引きずって、 1923 年の英訳版では "$l'$" と与えられていました
[3]ここで与えられた力の定義はあまり都合のいいものでないことが M. Planck によって初めて示されました。 運動量とエネルギーの法則がより簡単な形で書けるような力の定義の方がより的を射ています
[4]ただし、この和訳文については、サイトのライセンス (執筆時点では CC by-nc-sa; 改訂している可能性あり) に従うこととします
[5]この文書内ではダガーではなく「(英語版編集者注)」を脚注の先頭につけることで区別しています