$ \DeclareMathOperator{\arccosh}{arccosh} \DeclareMathOperator{\arcsinh}{arcsinh} \DeclareMathOperator{\rank}{rank} \DeclareMathOperator{\rot}{rot} \DeclareMathOperator{\grad}{grad} \DeclareMathOperator{\diver}{div} $

連続体力学のまとめ

さて、これまでに Euler 微分・Lagrange 微分や応力などの連続体力学における諸概念や、連続の式や Euler の方程式などの方程式を解説していきました。
ここら辺でそれらをまとめつつ、後に続く弾性体の力学および流体力学への導入をしていきたいと思います。
以下ご託です。 時間のない人は読まなくても問題ありません。

1物理量

今までに出てきた、連続体を記述するための物理量には以下のようなものがありました。
  • 密度 $\rho$
  • 速度テンソル $u^i$
  • 応力テンソル ${\sigma^i}_j$
  • 体積力(の比例係数) $K^i$

2方程式

今までの議論では以下の方程式を得ることができました。
  • 連続の方程式

    \begin{equation} \frac{\partial \rho}{\partial t} + \frac{\partial}{\partial x^i}(\rho u^i) = 0 \end{equation}
    (1)


  • Euler の方程式

    \begin{equation} \frac{Du^i}{Dt} = K^i + \frac{1}{\rho} \frac{\partial {\sigma^i}_j}{\partial x^j} \end{equation}
    (2)


3方程式は足りてるか?

登場した物理量の個数は、密度が 1 個分、速度テンソルは 3 個分、応力テンソルは 9 個分、体積力は 3 個分、の計 16 個分あります。
それに対し、得られた方程式は、連続の方程式で 1 個分、 Euler の方程式で 3 個分ですので、全然足りていないように思えます。
しかし、上に挙げた四つの物理量のうち、下の二つ(体積力と応力)は物体の材質や、周囲の状況[1]に依存しますので、方程式を立てられそうにはありません。
この二つの物理量を除けば残りの物理量は速度テンソルと密度の四つ分となり、方程式の数と一致するので、この体積力や応力を測定すれば今までに得られた方程式を解くことで運動を解析することができます。
よって、
連続体力学の仕事はこれで終わり
と言ってしまってもよいのではないでしょうか。

[1]電場がある、重力場がある、等々

4どうやって測る?

連続体力学はこれで終わり、などと書いてしまいましたが、そのためには体積力や応力を測定しなければなりません。 じゃぁどうやって測定しましょうか?

4.1体積力

まず、体積力の方ですが、こちらは重力やクーロン力・電磁力などのすでによく知られているような力しかありません。 連続体の周囲の状況を見れば、どのような体積力が働いているのかはすぐに知ることができます。

4.2応力

では応力はどうでしょうか? 応力は連続体同士が触れあうことで生じる内力です。 応力を測定するのはそんなに簡単なことではありません。 「連続体に板か何かを差し込んで、そこに作用する力でも測定しようか…」と思った人がいるかもしれませんが、水などの流体では板があることで運動自体が変わってしまいますし、木の棒に測定用の板…のようなものを差し込んだとしても、それでは木を断ち切ってしまうことになるのでやはり実験結果自体が変わってしまいます。

5方程式は解けるか?

いや、そもそも、もし応力や体積力が正確に分かったとしても方程式を解くことができるでしょうか?
…結果から言うと無理です。 こんなの解けるわけありません[1]
せいぜいコンピュータを使って数値解析で近似解を求める位しかできないです。

[1]特殊な条件でもあれば別ですが

6じゃあどうする?

「今までやったことは無駄だったのかいっ!」と怒られてしまいそうですが、ご心配なく。 きちんと道はあります。
じゃあどうするのかというと、連続体に様々な仮定を持ち込むのです。
どういうことかというと、例えば考えている連続体が水のような液体だとします。 水はほとんど粘性(粘り気)がありません。 粘性がないということは水は抵抗を受けずに流れることができるということなので、応力の成分のうち面に平行な応力がないものと考えることができます。 つまり、応力テンソルが位置に依存する変数 $p$ を用いて、
\begin{equation} \\{\sigma^i}_j = - p {\delta^i}_j \end{equation}
(3)
と書くことができます。 このような連続体を完全流体(perfect fluid)といいます。 まぁ応力をこういう風においたとしても変数 p が結局残ってしまい、これだけでは解くことができないので新しい方程式を 1 個導いてあげないといけません。 詳しくは流体力学の記事にて。
また金属や木の棒などはある程度力を加えてもすぐに元に戻ります。 このように変形させても元の形に戻るように応力が働く連続体を弾性体(elastic body)といいます。
注目している物体の性質を考え、適切な仮定をおくことで式を単純化してしまおう、というわけです。
そこでこれ以降では適切な仮定を持ち込みつつ、弾性体や流体の運動を見ていきたいと思います。