$ \DeclareMathOperator{\arccosh}{arccosh} \DeclareMathOperator{\arcsinh}{arcsinh} \DeclareMathOperator{\rank}{rank} \DeclareMathOperator{\rot}{rot} \DeclareMathOperator{\grad}{grad} \DeclareMathOperator{\diver}{div} $

はじめに

1連続体力学とは?

高校生で習う質点の力学[1]や、大学初年度あたりに習う剛体の力学[2]を使えばかなり広範囲の物理現象を説明することができます。
しかし現実の物質は大きさがありますし、変形だってします。 なので質点の力学や剛体の力学だけでは記述しきれない物体や物理現象が存在します。
よく知られているのは流体力学でしょうか。 たとえばコーヒーにミルクを垂らしてかき混ぜたときにどのようにミルクが混ざっていくか、とか、部屋に扇風機を置いて風を送るとどのように空気は流れていくか、とかを調べるやつですね。 他にもたとえばバイオリンの弦をはじいたときにどのように振動をするか(周波数や波の早さはいくつになるか)というのを考えるのも連続体力学のお仕事になります。
上であげたコーヒー(液体)とか空気(気体)などを流体(fluid)といい、バイオリンの弦は弾性体(elastic body)といいます。 また、このような外部の力に応じて変形をする物体を総称して連続体(continuum body)といいます。
連続体の運動を記述する学問、それが連続体力学になります。

[1]平たく言うと、考える物体の大きさがゼロだと仮定して議論を進める力学のことです
[2]こちらは考える物体は変形をしないことを仮定して議論を進める力学ですね

2連続体近似

ほとんどの人が直感的に了解していることなので、特に説明はいらない気もしますが、重要なことなのでちょっと言っておきます。

これから考える連続体、たとえば空気や水など、すべての物質はよく知られたように分子や原子から構成されています。 そうすると、原子も何もない空間と、原子があることで「詰まっている」空間が存在するので、どのような物質もこの意味で不連続です。 実際の物質は、たくさんのビー玉やパチンコ玉が箱に入っているイメージだ、と思ってみてください。
しかし私たちは普段、そんなことは意識しません。 感覚的には水は連続的に存在し、空気も連続的に存在します。 誰もビー玉が敷き詰められているような状態だとは思わないでしょう。
それはなぜかというと、原子や分子はとても小さいからです。 小さな空間を考えてもそこには何万、何十万個の粒子が存在することになります。
考える空間が原子や分子に対して十分大きいうちには密度や温度などの各種物理量はまるで連続的に分布しているように見えます。 ですが考える空間をもっともっと小さくしていき、粒子を二個や三個しか含まないような大きさまでたどり着くと、もう連続とは見なすことができなくなってしまいます。 たまたま粒子があるところをとれば密度はものすごく大きくなるし、いないところをとれば密度は 0 です。
なので、この連続と見なせるか見なせないかの境界付近の小さな体積で、微小な体積要素とみなしてしまおう、という考え方が生まれました。 このことを連続体近似といいます。
これ以降はこの仮定の下で議論を進めていきます。

3物理量の表し方

3.1Lagrange 記述

連続体のなかのある一点(粒子という[1])に注目し、それを追跡する記述方法を Lagrange(ラグランジュ) 記述 (Lagrangian description)といいます。
Lagrange 記述は気体分子運動論や質点系の力学を流用したものになっているので、直感的にわかりやすいかもしれません。
Lagrange 記述では独立変数は粒子のはじめの位置 $\bm{x}_0$ と時刻 $t$ になります。
\begin{equation} \bm{x} = \bm{x}(\bm{x}_0, t) \end{equation}
(1)
速度は普通に、
\begin{equation} \bm{u} = \bm{u}(\bm{x}_0, t) = \frac{\partial \bm{x}}{\partial t} \end{equation}
(2)
となります。

3.2Euler 記述

ここの粒子に注目するのではなく、ある一点に注目し、その点の物理量の変化を見る方法を Euler(オイラー) 記述 (Eulerian description) といいます。
こちらはいわゆる「場」の見方なので、全体の挙動を解析するのに適していますが、Newton 力学が見えにくく、ちょっとわかりにくいかもしれません。
Euler 記述では独立変数は注目している場所を表す変数 $\bm{x}$ と、時刻 $t$ になります。
ただ、速度は粒子に注目しなければ定義できないので、速度の定義は Lagrange 記述の方と同じです。 ただし、独立変数が $\bm{x}$$t$ であることを明確に表すために、
\begin{equation} \bm{u} = \bm{u}(\bm{x}, t) \end{equation}
(3)
と書いてしまいます。

Lagrange 記述と Euler 記述の違いがこの段階でよく分からなかった人も、後で具体例を見ていけば何となく分かるようになる…と思うので今の段階では「ふーん、とりあえず二種類の見方があるのか」ぐらいに思ってもらって構いません。

[1]原子や分子のことではありません

4参考文献

参考文献です。 どうでもいいですけど、連続体力学ってあんましネット上に情報がありませんよね…。 相対論なんかと比べて地味だからでしょうか? 私が情弱なだけかもしれませんが。