$ \DeclareMathOperator{\arccosh}{arccosh} \DeclareMathOperator{\arcsinh}{arcsinh} \DeclareMathOperator{\rank}{rank} \DeclareMathOperator{\rot}{rot} \DeclareMathOperator{\grad}{grad} \DeclareMathOperator{\diver}{div} $

Euler微分とLagrange微分

前回の記事で流体力学における物理量の記述方法には Euler 記述と Lagrange 記述があることを解説しましたが、物理量の時間変化の計算方法(時間微分)にも Euler 的な見方を用いる方法と Lagrange 的な見方を用いる方法があります。

1Euler 微分

いま、Euler 記述で表された物理量、
\begin{equation} A = A(\bm{x}, t) \end{equation}
(1)
があったとします。
この物理量の時間変化は、Euler 的な発想では、観察する点を固定するので、$\bm{x}$ を固定した時間微分、
\begin{equation} \frac{\partial A}{\partial t} \end{equation}
(2)
でおkでしょう。
$\frac{\partial}{\partial t}$Euler 微分 といいます。 ただの偏微分ですね。 わざわざ Euler 微分とか呼ぶ意味が分からないかもしれませんが、次の Lagrange 微分と区別するために名前をつけてみたのだと思います。

2Lagrange 微分

一方、 Lagrange 的な発想を使うと、点 $\bm{x}(\bm{x}_0, t)$ にある粒子は $\Delta t$ 秒後には点 $\bm{x}(\bm{x}_0, t + \Delta t)$ に移動しているので、$A(\bm{x}(\bm{x}_0, t), t)$$A(\bm{x}(\bm{x}_0, t), t + \Delta t)$ ではなく[1]$A(\bm{x}(\bm{x}_0, t), t)$$A(\bm{x}(\bm{x}_0, t + \Delta t), t + \Delta t)$ を比べるのが正当でしょう。
従って Lagrange 記述における物理量の時間的変化は、
\begin{eqnarray*} \lim_{\Delta t \rightarrow 0} \frac{A(\bm{x}(\bm{x}_0, t + \Delta t), t + \Delta t) - A(\bm{x}(\bm{x}_0, t), t)}{\Delta t} & = & \sum_i \frac{\partial A}{\partial x_i}\frac{\partial x_i}{\partial t} + \frac{\partial A}{\partial t} \\ & = & \left( \left(\begin{matrix} u_1 \\ u_2 \\ u_3 \end{matrix}\right) \cdot \left(\begin{matrix} \frac{\partial}{\partial x_1} \\ \frac{\partial}{\partial x_2} \\ \frac{\partial}{\partial x_3} \end{matrix}\right) + \frac{\partial}{\partial t} \right) A \\ & = & \left(\frac{\partial}{\partial t} + \bm{u} \cdot \grad\right) A \end{eqnarray*}
(3)
となります。 $u_i$ は粒子の速度です。
ここで、
\begin{equation} \frac{D}{Dt} := \frac{\partial}{\partial t} + \bm{u} \cdot \grad \end{equation}
(4)
Lagrange 微分 といいます。
なんか Euler 微分に対してかなり[2]複雑ですね。
右辺第一項は注目している点の周辺部における時間発展に対しての増加量を表しているだけなので、問題はないでしょう。 しかし右辺第二項はどういう意味があるのでしょうか?
少し考えれば分かると思いますが、これは注目している点が移動することによる変化量を表します。 $x$ 軸方向 ($u_x\frac{\partial A}{\partial x}$) について図を書いてみました。
Lagrange微分の第二項のx成分
Lagrange 微分は一見フクザツですが、こうして意味を考えてみれば、なんか当たり前に見えてきますねw

[1]この二つを比べるのが Euler 微分でしたね
[2]いや、言うほどじゃないけど