$ \DeclareMathOperator{\arccosh}{arccosh} \DeclareMathOperator{\arcsinh}{arcsinh} \DeclareMathOperator{\rank}{rank} \DeclareMathOperator{\rot}{rot} \DeclareMathOperator{\grad}{grad} \DeclareMathOperator{\diver}{div} $

保存則とNoetherの定理

Lagrangian $L$ に対称性が見いだせる場合には、何らかの保存則が成り立ちます。
後で説明するように、 Newton 力学でおなじみの運動量保存則、角運動量保存則、エネルギー保存則はそれぞれ並進対称性、回転対称性、時間発展対称性に依拠する保存則だということが分かります。
運動量保存則、角運動量保存則、エネルギー保存則を個別に証明した後、 これらをまとめあげた Noether(ネーター) の定理を説明していきたいと思います。

1各種保存則

冒頭でも挙げたとおり、 Lagrangian に対称性がある[1]場合、何らかの保存則が存在します。

1.1運動量保存則

1.1.1仮定

Lagrangian $L$ がある座標変数 $q_i$ を含まないとき、この一般化座標 $q_i$循環座標(cyclic coordinate) といいます。
さて、いま $L$$q_i$ を含まない、つまり $q_i$ が循環座標であるとします。 従って、
\begin{equation} \frac{\partial L}{\partial q_i} \equiv 0 \end{equation}
(1)
が成り立ちます。

1.1.2説明

Lagrange の運動方程式は、
\begin{equation} \frac{dp_i}{dt} = \frac{\partial L}{\partial q_i} \end{equation}
(2)
でした。 よって、
\begin{eqnarray*} \frac{dp_i}{dt} & = & 0 \\ \therefore p_i & = & \text{const.} \end{eqnarray*}
(3)

1.1.3結論

つまり、Lagrangian が $q_i$ に依らないならば、 $q_i$ に対応する運動量 $p_i$[2] は保存するということがいえたことになります。

1.2角運動量保存則

回転を扱う際にはベクトル表記をするのが便利です。 以下では $\bm{q_i}, \bm{p_i}$ などはベクトル表記であることに注意してください。

1.2.1仮定

Lagrangian がどんな微小回転に対してもその形を変えないこと、
\begin{equation} L'(\bm{q}_i + \bm{\omega} \times \bm{q}_i, \bm{\dot{q}}_i + \bm{\omega} \times \bm{\dot{q}}_i, t) \equiv L(\bm{q}_i + \bm{\omega} \times \bm{q}_i, \bm{\dot{q}}_i + \bm{\omega} \times \bm{\dot{q}}_i, t) \end{equation}
(4)
を仮定します。
回転する向きと大きさを与えるベクトル $\bm{\omega}$ は微小とします ($\omega\ll 1$) 。
$L$ は回転前の座標に対する Lagrangian 、$L'$ は回転後の座標に対する Lagrangian を与える式です。
$L$$L'$の違い
…といっても、すごく…意味不明だと思われるので、もうちょっと説明しておきます。
例えば直交座標に対する Lagrangian は、
\begin{equation} L_{\text{cart}}(x, y, \dot{x}, \dot{y}, t) = \frac{1}{2}m(\dot{x}^2+\dot{y}^2) - V_{\text{cart}}(x, y, \dot{x}, \dot{y}, t) \end{equation}
(5)
で与えられ、二次元極座標に対する Lagrangian は、
\begin{equation} L_{\text{polar}}(r, \theta, \dot{r}, \dot{\theta}, t) = \frac{1}{2}m(\dot{r}^2+r^2\dot{\theta}^2) - V_{\text{polar}}(r, \theta, \dot{r}, \dot{\theta}, t) \end{equation}
(6)
と、全く違う形をしています。
これを、
\begin{equation} L_{\text{cart}}(q_1, q_2, \dot{q}_1, \dot{q}_2, t) = \frac{1}{2}m(\dot{q}_1^2+\dot{q}_2^2) - V_{\text{cart}}(q_1, q_2, \dot{q}_1, \dot{q}_2, t) \end{equation}
(7)
および、
\begin{equation} L_{\text{polar}}(q_1, q_2, \dot{q}_1, \dot{q}_2, t) = \frac{1}{2}m(\dot{q}_1^2+q_1^2\dot{q}_2^2) - V_{\text{polar}}(q_1, q_2, \dot{q}_1, \dot{q}_2, t) \end{equation}
(8)
と書くとより明確でしょうか。
直交座標から極座標への変換に限らず、一般の変換に対して Lagrangian は通常その函数形を変えてしまうので、 両者を区別するためにプライム(')を付けているわけです。
…まぁ Lagrangian の値自体は全く同じなので、わざわざ区別しないこともあるどねw[3]

1.2.2説明

Lagrangian の定義から、座標変換をしたところで (函数形は変るかもしれないけど) Lagrangian の値は変わるはずがないので、
\begin{equation} L'(\bm{q}_i + \bm{\omega} \times \bm{q}_i, \bm{\dot{q}}_i + \bm{\omega} \times \bm{\dot{q}}_i, t) - L(\bm{q}_i, \bm{\dot{q}}_i, t) = 0 \end{equation}
(9)
となるはずです。 これを使いましょ。
左辺第一項をガシガシ変形していきます。 まず仮定から、
\begin{equation} L'(\bm{q}_i + \bm{\omega} \times \bm{q}_i, \bm{\dot{q}}_i + \bm{\omega} \times \bm{\dot{q}}_i, t) = L(\bm{q}_i + \bm{\omega} \times \bm{q}_i, \bm{\dot{q}}_i + \bm{\omega} \times \bm{\dot{q}}_i, t) \end{equation}
(10)
ですね[4]。 ここで $\bm{\omega}$ が微小量であることから、一時近似的な発想(?)から、
\begin{equation} L(\bm{q}_i + \bm{\omega} \times \bm{q}_i, \bm{\dot{q}}_i + \bm{\omega} \times \bm{\dot{q}}_i, t) = L(\bm{q}_i, \bm{\dot{q}}_i, t) + \frac{\partial L}{\partial \bm{q}_i} \cdot (\bm{\omega} \times \bm{q}_i) + \frac{\partial L}{\partial \bm{\dot{q}}_i} \cdot (\bm{\omega} \times \bm{\dot{q}}_i) \end{equation}
(11)
なる近似が成り立つことが分かります。 従って(9)式の左辺は、
\begin{equation} \frac{\partial L}{\partial \bm{q}_i} \cdot (\bm{\omega} \times \bm{q}_i) + \frac{\partial L}{\partial \bm{\dot{q}}_i} \cdot (\bm{\omega} \times \bm{\dot{q}}_i) \end{equation}
(12)
となることが分かります。
この式に対し、
\begin{equation} \bm{A} \cdot (\bm{B} \times \bm{C}) = \bm{B} \cdot (\bm{C} \times \bm{A}) = \bm{C} \cdot (\bm{A} \times \bm{B}) \end{equation}
(13)
というスカラー三重積の公式を適用すると、
\begin{equation} \frac{\partial L}{\partial \bm{q}_i} \cdot (\bm{\omega} \times \bm{q}_i) + \frac{\partial L}{\partial \bm{\dot{q}}_i} \cdot (\bm{\omega} \times \bm{\dot{q}}_i) = \bm{\omega} \cdot \left( \bm{q}_i \times \frac{\partial L}{\partial \bm{q}_i} + \bm{\dot{q}}_i \times \frac{\partial L}{\partial \bm{\dot{q}}_i} \right) = 0 \end{equation}
(14)
となります。 この式がどんな微小回転$\bm{\omega}$に対しても成り立つので、結局、
\begin{equation} \bm{q}_i \times \frac{\partial L}{\partial \bm{q}_i} + \bm{\dot{q}}_i \times \frac{\partial L}{\partial \bm{\dot{q}}_i} = 0 \end{equation}
(15)
が成り立つことになります。 左辺第一項は Lagrange の運動方程式、左辺第二項は一般化運動量の定義から、
\begin{eqnarray*} \bm{q}_i \times \bm{\dot{p}}_i + \bm{\dot{q}}_i \times \bm{p}_i & = & 0 \\ \frac{d}{dt}(\bm{q}_i \times \bm{p}_i) & = & 0 \end{eqnarray*}
(16)
が成り立つことが分かります。

1.2.3結論

つまり、Lagrangian が任意の微小変換に対しその形を変えないならば、 $\bm{q}_i \times \bm{p}_i$ は保存するということがいえました。

1.3エネルギー保存則

1.3.1仮定

Lagrangian $L$ が時刻 $t$ に陽に依らないこと、
\begin{equation} \frac{\partial L}{\partial t} = 0 \end{equation}
(17)
を仮定します。

1.3.2説明

とりあえず Lagrangian の時間微分をとってみます。
\begin{eqnarray*} \frac{dL}{dt} & = & \frac{\partial L}{\partial q_i} \dot{q}_i + \frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i} \ddot{q}_i + \frac{\partial L}{\partial t} \\ & = & \dot{p}_i \dot{q}_i + p_i \ddot{q}_i \\ & = & \frac{d}{dt}(p_i\dot{q}_i) \end{eqnarray*}
(18)
となるので、
\begin{equation} H := p_i \dot{q}_i - L \end{equation}
(19)
とおいてあげると $H$ の時間微分は $0$ となることが分かります。
\begin{equation} \frac{dH}{dt} = 0 \end{equation}
(20)
なお、 $H$ は Hamiltonian と呼ばれています。
考えている座標系を直交座標系とすると、
\begin{eqnarray*} H & = & m\dot{x} \cdot \dot{x} - \left( \frac{1}{2}m\dot{x}^2 - V \right) \\ & = & \frac{1}{2}m\dot{x}^2 + V \\ & = & E \end{eqnarray*}
(21)
となるので、 Hamiltonian $H$ は力学的エネルギーのことだと分かります。

1.3.3結論

従って、Lagrangian $L$ が時間に陽に依存しないとき、Hamiltonian $H$ (エネルギーに相当) は保存するということが示されました。

[1]対称性があるとは、ある座標変換に対し Lagrangian が形を変えないことだと思っておいてください
[2]ちなみに「$p_i$$q_i$に共役な運動量」などと言うことがあります
[3]とかいって余計混乱させてみた
[4]左はプライム(')付き、右はプライム無しですよ

2Noether の定理

今までみてきた保存則はどれも、Lagrangian が○○という座標変換に対し形を変えないならば、××という物理量は保存するという内容のものでした。 このことを一般的に述べた定理として、 Noether(ねーたー) の定理というものがあります。
ただ、これ(太字部)は時間が変換に関わらない限り一般的にも正しいのですが、 時間も変換に関わってくる場合[1]には Lagrangian だけではなく、作用積分、
\begin{equation} I = \int L(q, \dot{q}, t) dt \end{equation}
(22)
が不変であることも要請されます[2]

ちなみに Noether というのはドイツ出身のユダヤ人数学者 Amalie Emmy Noether のことです。
Amalie Emmy Noether

2.1内容

$\delta q_i, \delta t$ を微小量として、
\begin{eqnarray*} q_i(t) & \mapsto & q_i'(t') = q_i(t) + \delta q_i(q, t) \\ t & \mapsto & t' = t + \delta t(q, t) \end{eqnarray*}
(23)
という変換を考えます。
そしてこの変換に対して、Lagrangian の形が変わらないこと、
\begin{equation} L'(\cdot, \cdot, \cdot) = L(\cdot, \cdot, \cdot) \end{equation}
(24)
および作用積分が変わらないこと、
\begin{equation} \int_{a'}^{b'} L'\left(q', \frac{dq'}{dt'}, t'\right) dt' = \int_a^b L\left(q, \frac{dq}{dt}, t\right) dt \end{equation}
(25)
を仮定します。 左辺において、変換後の一般化速度は変換前の時刻$t$でなく、変換後の時刻$t'$で微分することに注意してください[3]
するとこのとき、
\begin{equation} p_i \delta q_i - (p_i \dot{q}_i - L) \delta t = \text{const.} \end{equation}
(26)
が成り立つ、というのが Noether の定理です。

2.2証明

結構面倒ですが、まぁ証明してしまいましょう。 とりあえず色々と不便なので、
\begin{equation} I' := \int_{a'}^{b'} L'\left(q', \frac{dq'}{dt'}, t'\right) dt' \end{equation}
(27)
\begin{equation} I := \int_a^b L\left(q, \frac{dq}{dt}, t\right) dt \end{equation}
(28)
とおいておきましょう。
まずは $I'$ がきれいになるように式変形していきます。
\begin{equation} \frac{dt'}{dt} = 1 + \delta \dot{t} \end{equation}
(29)
なので、$\epsilon \ll 1$の時に成り立つ近似式、
\begin{equation} (1 + \epsilon)^{-1} = 1 - \epsilon \end{equation}
(30)
を使うと、
\begin{eqnarray*} \frac{dt}{dt'} & = & (1 + \delta \dot{t})^{-1} \\ & = & 1 - \delta \dot{t} \end{eqnarray*}
(31)
なので、
\begin{eqnarray*} \frac{dq'}{dt'} & = & \frac{dq'}{dt} \times \frac{dt}{dt'} \\ & = & (\dot{q} + \delta \dot{q}) (1 - \delta \dot{t}) \\ & = & \dot{q} + \delta \dot{q} - \dot{q} \delta \dot{t} \end{eqnarray*}
(32)
となります。 ただし最後の変形では、$\delta$同士の積は非常に小さいとして無視しています。 これらを念頭に置きながら、$L'$ を線形近似してあげると、
\begin{eqnarray*} L'\left(q', \frac{dq'}{dt'}, t'\right) & = & L\left(q', \frac{dq'}{dt'}, t'\right) \\ & = & L\left(q+\delta q, \dot{q} + \delta \dot{q} - \dot{q} \delta \dot{t}, t+\delta t\right) \\ & = & L(q, \dot{q}, t) + \frac{\partial L}{\partial q_i}\delta q_i + \frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i}(\delta \dot{q}_i-\dot{q}_i\delta \dot{t}) + \frac{\partial L}{\partial t}\delta t \\ \end{eqnarray*}
(33)
となります。 またここで、$I'$中の$dt'$は、
\begin{equation} dt' = (1 + \delta \dot{t}) dt \end{equation}
(34)
なので、結局$I'$は、
\begin{eqnarray*} I' & = & \int_a^b \left( L(q, \dot{q}, t) + \frac{\partial L}{\partial q_i}\delta q_i + \frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i}(\delta \dot{q}_i-\dot{q}_i\delta \dot{t}) + \frac{\partial L}{\partial t}\delta t \right) (1 + \delta \dot{t}) dt \\ & = & \int_a^b \left( L(q, \dot{q}, t) + \frac{\partial L}{\partial q_i}\delta q_i + \frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i}(\delta \dot{q}_i-\dot{q}_i\delta \dot{t}) + \frac{\partial L}{\partial t}\delta t + L\delta\dot{t} \right) dt \end{eqnarray*}
(35)
となります。 最後の変形では、さっきと同じように$\delta$の二次の項は無視しています。
以上から、
\begin{eqnarray*} \Delta I & := & I' - I \\ & = & \int_a^b \left( \frac{\partial L}{\partial q_i}\delta q_i + \frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i}(\delta \dot{q}_i-\dot{q}_i\delta \dot{t}) + \frac{\partial L}{\partial t}\delta t + L\delta\dot{t} \right) dt \end{eqnarray*}
(36)
となります。
さてここで、
\begin{eqnarray*} \frac{d}{dt} \left( \frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i} \delta q_i \right) & = & \frac{\partial L}{\partial q_i}\delta q_i + \frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i}\delta \dot{q}_i \\ \frac{d}{dt} \left( \frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i} \dot{q}_i \delta t \right) & = & \frac{\partial L}{\partial q_i}\dot{q}_i\delta t + \frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i}\ddot{q}_i\delta t + \frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i}\dot{q}_i\delta\dot{t} \\ \frac{d}{dt} \left( L \delta t \right) & = & L\delta\dot{t} + \left( \frac{\partial L}{\partial q_i}\dot{q}_i + \frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i}\ddot{q}_i + \frac{\partial L}{\partial t} \right)\delta t \end{eqnarray*}
(37)
が成り立っているので、実は、
\begin{eqnarray*} \Delta I & = & \int_a^b \frac{d}{dt} \left( \frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i} \delta q_i - \frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i} \dot{q}_i \delta t + L \delta t \right) dt \\ & = & \int_a^b \frac{d}{dt} \left( p_i \delta q_i - (p_i\dot{q}_i - L) \delta t \right) dt \end{eqnarray*}
(38)
この変形はちょっとトリッキーですが、正しいことをやっていることは明らかでしょう。
ここまででまだ$I'=I$という仮定を使っていないので、$\Delta I=0$であることを考えると、
\begin{equation} \int_a^b \frac{d}{dt} \left( p_i \delta q_i - (p_i\dot{q}_i - L) \delta t \right) dt = 0 \end{equation}
(39)
です。 今積分範囲の$[a, b]$は任意にとれるので、 積分の中身も$0$であること、
\begin{equation} \frac{d}{dt} \left( p_i \delta q_i - (p_i\dot{q}_i - L) \delta t \right) = 0 \end{equation}
(40)
がいえます。 従って、
\begin{equation} p_i \delta q_i - (p_i\dot{q}_i - L) \delta t = \text{const.} \end{equation}
(41)
が成り立つことを示すことができました。

2.3なぜ作用積分が必要か

あらかじめ言っておきますが、この議論は間違っているのでご注意ください。

2.3.1Lagrangian の不変性からの導出

始めの運動量保存則、角運動量保存則、エネルギー保存則の説明では作用積分を使わずに、 Lagrangian の不変性だけで議論ができました。 しかし Noether の定理では作用積分の不変性を使って証明を行っています。
そんな自分に、「Lagrangian の不変性だけで議論できるんじゃないんだろうか…?」という疑問が沸いて出てきました。 まぁそっちの方が議論が簡単だし、今までの三つの保存則の説明をみれば作用積分なんて使わない方が自然ですよねw
なので Lagrangian の不変性から Noether の定理を証明してみよう! …と思って途中までやったのですが、なにやらおかしなことになってしまいました。

2.3.2仮定

座標変換、
\begin{eqnarray*} q_i(t) & \mapsto & q_i'(t') = q_i(t) + \delta q_i(q, t) \\ t & \mapsto & t' = t + \delta t(q, t) \end{eqnarray*}
(42)
に対して Lagrangian の形が変わらないこと、
\begin{equation} L'(\cdot, \cdot, \cdot) = L(\cdot, \cdot, \cdot) \end{equation}
(43)
のみを仮定します。

2.3.3証明の試み

Lagrangian は (運動量)-(ポテンシャルエネルギー) で定義される量ですから、座標変換しようが何をしようが Lagrangian の値自体は変わることはありません。 従って、
\begin{equation} L'(q', \dot{q}', t') = L(q, \dot{q}, t) \end{equation}
(44)
が成り立ちます。 なので、
\begin{equation} \Delta L := L'(q', \dot{q}', t') - L(q, \dot{q}, t) = 0 \end{equation}
(45)
です。
今仮定から、
\begin{equation} L'(q', \dot{q}', t') = L(q', \dot{q}', t') \end{equation}
(46)
なので、
\begin{equation} \Delta L = L(q', \dot{q}', t') - L(q, \dot{q}, t) \end{equation}
(47)
です。 ここで右辺第一項を上で行ったようにテイラー展開して $\delta$ の一次の項まで残すと、
\begin{equation} \Delta L = \frac{\partial L}{\partial q_i}\delta q_i + \frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i}(\delta \dot{q}_i-\dot{q}_i\delta \dot{t}) + \frac{\partial L}{\partial t}\delta t \end{equation}
(48)
となることが分かります[4]
さてここで、$\Delta L = 0$ ですので、
\begin{equation} \frac{\partial L}{\partial q_i}\delta q_i + \frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i}(\delta \dot{q}_i-\dot{q}_i\delta \dot{t}) + \frac{\partial L}{\partial t}\delta t = 0 \end{equation}
(49)
が成り立つはずです。
ところが、Noether の定理が成り立つためには、
\begin{equation} \frac{d}{dt}(p_i\delta q_i - (p_i\dot{q}_i - L)\delta t) = 0 \end{equation}
(50)
つまり、
\begin{equation} \frac{\partial L}{\partial q_i}\delta q_i + \frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i}(\delta \dot{q}_i-\dot{q}_i\delta \dot{t}) + \frac{\partial L}{\partial t}\delta t + L\delta\dot{t} = 0 \end{equation}
(51)
が成り立つはずです。
上の二つの式は似通っていますが、明らかに両立しません。 だって$L\delta\dot{t}=0$じゃないといけないんだもん。 矛盾です。

2.3.4どこが違うか

私はここではまってしまい、かれこれ5時間以上もネットや本屋の資料を漁るはめになってしまいましたorz まぁ漁っても何も出てこなかったけどw[5]
しかしまぁ色々と考えてみた結果、次のことが原因で間違った議論になったのではないか、という結論に達しました。
Lagrangian は時間を含む変換をすると $L=T-V$ でなくなってしまう
つまり、$L'(q', \dot{q}', t') = L(q, \dot{q}, t)$としたのが間違え
どの書籍 or サイトを見ても、当たり前のように$L=T-V$と書いてありますが、まぁそもそも Lagrangian の資格というのは、 実際に起こりうる軌跡$(q, \dot{q})$に対して、
\begin{equation} \delta \int L(q, \dot{q}, t) dt = 0 \end{equation}
(52)
が成り立つことです。 それがたまたま直交座標の場合には、
\begin{equation} L = T - V \end{equation}
(53)
であることが分かり、さらに適当な座標変換、
\begin{eqnarray*} q_i' & = & q_i'(q_1, q_2, \cdots, q_n) \\ \dot{q}_i' & = & \dot{q}_i'(q_1, \cdots, q_n, \dot{q}_1, \cdots, \dot{q}_n) \end{eqnarray*}
(54)
に対しても同じように成り立つ、という議論でした。
この変換には時間を含んでいないので、時間を含むような変換に対しては Lagrangian を変えずに同じ方程式が成り立つということは全くもっていえないわけです。
だからまぁ $L' = L$ としたのは安直だったな、と五時間悩んだ後に後悔している次第です。

[1]例えば、$t \mapsto t+\epsilon t$とか
[2]ただエネルギー保存則のように、定数分だけずれる変換($t \mapsto t+\epsilon$)では Lagrangian の不変性だけからも議論できる
[3]つまり、$\frac{dq_i'}{dt}$は間違えで、$\frac{dq_i'}{dt'}$は正解だよということ。(←はぅ〜書いたはいいけどつぶれて見えにくいよ〜。あ、でも分かるよね)
[4]計算については上の証明の部分を参照してください
[5]もしかして俺情弱?

3時間を含まない Noether の定理

ということで時間を含む変換を考えたときの Noether の定理は作用積分とか出てきて結構複雑なことになってしまいましたが、 それでは逆に時間を含まない変換しか行わない特別な場合には、この定理はもっと簡単になるのではないでしょうか?
というか明らかに簡単にできますよね。 時間を含まない変換なら Lagrangian が変わらないことが使えるんですから、Lagrangian の対称性のみを使って議論ができるはずです…。

3.1内容

$\delta q_i$ を微小量として、
\begin{equation} q_i \mapsto q_i' = q_i + \delta q_i(q) \end{equation}
(55)
という微小変換を考えます。
このときに、Lagrangian の形が変わらないこと、
\begin{equation} L'(q', \dot{q}', t) = L(q', \dot{q}', t) \end{equation}
(56)
を仮定します。
するとこのとき、
\begin{equation} p_i\delta q_i = \text{const.} \end{equation}
(57)
が成り立つ、つまり、$p_i\delta q_i$が保存量になっていることが分かります。

3.2証明

まずは、
\begin{equation} \Delta L := L'(q', \dot{q}', t) - L(q, \dot{q}, t) \end{equation}
(58)
とおいておきます。
仮定より、
\begin{equation} L'(q', \dot{q}', t) = L(q', \dot{q}', t) \end{equation}
(59)
なので、右辺を線形近似して$\Delta L$の式に代入してあげることで、
\begin{eqnarray*} \Delta L & = & \frac{\partial L}{\partial q_i}\delta \dot{q}_i + \frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i}\delta \ddot{q}_i \\ & = & \dot{p}_i\delta \dot{q}_i + p_i\delta \ddot{q}_i \\ & = & \frac{d}{dt}(p_i\delta \dot{q}_i) \end{eqnarray*}
(60)
となります。
いま考えているのは時間を含まない変換ですから、Lagrangian の値は変換前後で変化しないこと、
\begin{equation} \Delta L = 0 \end{equation}
(61)
がいえるので、結局、
\begin{eqnarray*} \frac{d}{dt}(p_i\delta \dot{q}_i) = 0 \end{eqnarray*}
(62)
つまり、
\begin{eqnarray*} p_i\delta \dot{q}_i = \text{const.} \end{eqnarray*}
(63)
が成り立つことが分かります。

4Noether の定理による各種保存則の証明

始めの方でやったのと同じことですが、 Noether の定理を使って、各種保存則を示しましょう。

4.1運動量保存則

$\epsilon \ll 1$なる$\epsilon$に対し、
\begin{equation} q_i \mapsto q_i + \epsilon \end{equation}
(64)
なる微小変換を考えます。 この変換に対して Lagrangian が不変であることを仮定しましょう。
すると時間を含まない Noether の定理から、
\begin{eqnarray*} p_i \epsilon & = & \text{const.} \\ \therefore p_i & = & \text{const.} \end{eqnarray*}
(65)
がいえます。

4.2角運動量保存則

$\omega \ll 1$なる$\bm{\omega}$に対し、
\begin{equation} \bm{q}_i \mapsto \bm{q}_i + \bm{\omega} \times \bm{q}_i \end{equation}
(66)
という変換を考えます。 そして前と同様に、この変換に対して Lagrangian が不変であることを仮定しす。
すると時間を含まない Noether の定理から、
\begin{eqnarray*} \bm{p}_i \cdot (\bm{\omega} \times \bm{q}_i) & = & \text{const.} \\ \bm{\omega} \cdot (\bm{q}_i \times \bm{p}_i) & = & \text{const.} \\ \therefore \bm{q}_i \times \bm{p}_i & = & \text{const.} \end{eqnarray*}
(67)
がいえます。

4.3エネルギー保存則

$\epsilon \ll 1$なる$\epsilon$に対し、
\begin{equation} t \mapsto t + \epsilon \end{equation}
(68)
なる変換を考えます。 この変換に対して Lagrangian が不変であることを仮定します。
いま、時間を含む変換をしているので、作用積分が変わらないことも仮定しなければいけないような気がしますが、
\begin{equation} dt' = dt \end{equation}
(69)
となっているため、Lagrangian が不変であれば作用積分も不変であり、わざわざ作用積分が不変であることをチェックする必要はありません[1]
さてこのとき Noether の定理から、
\begin{eqnarray*} p_i \cdot 0 - (p_i \dot{q}_i - L) \epsilon & = & \text{const.} \\ p_i \dot{q}_i - L & = & \text{const.} \end{eqnarray*}
(70)
がいえ、
\begin{equation} H := p_i \dot{q}_i - L \end{equation}
(71)
が保存量になっていることが分かります。

[1]Noether の定理の証明で出てきた$I, I'$をよく見ると、Langrangian が不変であり、かつ$dt'=dt$ならば必ず$I, I'$は同じ値になることが分かります