$ \DeclareMathOperator{\arccosh}{arccosh} \DeclareMathOperator{\arcsinh}{arcsinh} \DeclareMathOperator{\rank}{rank} \DeclareMathOperator{\rot}{rot} \DeclareMathOperator{\grad}{grad} \DeclareMathOperator{\diver}{div} $

Lagrange の運動方程式

ニュートンの運動方程式、
\begin{equation} \dot{\bm{p}} = \bm{f} \end{equation}
(1)
を用いれば、いかなるマクロな物体の運動も ( 計算できるかどうかの問題を除いて ) 記述できるのでした。
しかしニュートンの運動方程式は、 「自然は、"ある物理量"を最小にするように [1] 運動を行う」 という法則と同等であることがいえるのです。
なお第一章、第二章あたりは与太話ですので読み飛ばしても構いません。

[1]ほとんどの場合が最小になる場合なのですが、「停留点をとるような運動をとる」といった方がより正確です

1最小原理

世の中の物理法則の中には、「○○が最小となるような現象が起こる」と表せるものが数多く存在します。

1.1Fermat の原理

屈折率が場所によって異なる空間を、地点 A から地点 B までいくときの実際の経路について、次のような原理があります。
光線は、 A から B へ行くまでの所要時間が最も短くなるような経路を通る
またはこれを数式で表して、
\begin{equation} \int_A^B \frac{ds}{v} : \text{minimum} \end{equation}
(2)
これを、Fermat(フェルマー) の原理といいます。

1.2Maupertuis の原理

Fermat の原理のシノニムから、フランスの物理・数学者、 Maupertuis(モーペルチュイ) は、 ポテンシャルが時間的変化をしない場合に限り物体は、
\begin{equation} \int_A^B v \cdot ds : \text{minimum} \end{equation}
(3)
なる運動をすることを発見しました。 これを、Maupertuis の原理といいます。
ちなみに、$T$ を系の運動エネルギー、$V$ を系のポテンシャルエネルギー、$E$ を系全体の力学的エネルギーとすることで、
\begin{eqnarray*} v & = & \sqrt{\frac{2T}{m}} \\ & = & \sqrt{\frac{2}{m} \left( E - V \right)} \end{eqnarray*}
(4)
とできるので、(3)式は、
\begin{equation} \int_A^B \sqrt{\frac{2}{m} \left( E - V \right)} ds : \text{minimum} \end{equation}
(5)
とでき、さらに $\frac{2}{m}$ が定数ですから、
\begin{equation} \int_A^B \sqrt{\left( E - V \right)} ds : \text{minimum} \end{equation}
(6)
と言い換えることができます。

2質点中心から軌道中心へ

…ということで、物理法則の中には「○○が最小」ということができるものがあることを例を挙げて見てきたのですが、 それでは Newton の運動方程式もこの様な形の物理法則に還元できないのでしょうか?

2.1Newton の運動方程式は質点中心

Newton の運動方程式は、我々の身近な ( マクロな ) 現象を取りこぼしなく記述できますし、 「加速度」と「力」が等しいという簡単な表現がされているので、直感的にも理解しやすい素晴らしい物理法則ですが、 ちょっと扱いづらいところがあります。
何がどう扱いづらいかというと、 Newton の運動方程式は時間の微分方程式ですから、
ある瞬間の物理量が分かったときに、次の瞬間の各物理量を記述している
というところにあります。
我々が普通知りたいのは、物体の軌跡、つまり物体がどのようなルートをとって、どこに最終的にたどり着くか?ということだと思います。
例えば、
  • バネに重りをつけて押すと単振動になるのだ、とか
  • 物を放り投げると放物線になるのだ、とか
  • この坂道の一番上からボールを転がすとどこに転がるんだろう?とか
そういった類の物を知りたいのであって、次の瞬間に物体がどういう位置にあり、どんな運動量を持つのか、という情報を知りたいわけではありません。
細かい過程ではなく、全体の動き、つまり軌道などのもっと大局的な動きを知りたいわけです[1]

2.2運動は「何か」を最小にする

地点 A から B まで、例えば東京から京都まで行くことを考えます。 東京から京都に行くには新幹線で行くとか、飛行機を使って行くとか、昔の人を習って徒歩で行ってみるとか、 無数の行き方があると思います。
しかし現実に起こるのは数ある行き方のうちの一つだけです。
それでは実際に起こるのはどの行き方なのでしょうか?
まぁ人によると思いますが、お金の一番かからない方法で行こうとか、時間が一番早い方法で行こうとか、そんなんで選ぶと思います。
これはつまり、お金を最小にするとか、時間を最小にするような経路を選ぶとも言えるでしょう[2]
今の例のシノニムで、物理法則も、
無数のとりうる軌道の中で、「ある物理量$I$」を最小にするような運動が起こる
と言えたらいいのになぁ…と思った人がいるのです[3]
実際、 Fermat の原理とか、 Maupertuis の原理とかそうですよね?

[1]Newton の運動方程式を否定しているわけではありません。軌道をメインに考えたい、というための導入をしたかっただけですので
[2]ちょっと強引ですねw
[3]本人に聞いたわけではないので分かりませんが、多分そういう信念を持って研究がなされたのだと思います

3作用積分

3.1汎函数

で、先に進む前にちょっと上の日本語をもう少し数学っぽく言ってみましょう。
まず「軌道」ですが、これは時刻が決まると位置が決まる函数、
\begin{equation} q(t) \end{equation}
(7)
とみることができます。 「ある物理量$I$」は、軌道が決まれば値が決まるので、$q$を変数とする函数ですね。 …と言いたいところですが、困ったことに$q$は変数ではなく函数なんです。 つまり、「$I$は変函数(?)$q$の函数」とでも言えばいいんでしょうか…。 ようするに、
函数 $\longmapsto$
です。 普段、我々が見てきた函数はどれも、
$\longmapsto$
でしたよね。 そこで、
函数 $\longmapsto$
なる写像を、汎函数と呼んで区別します。 また、引数が函数であることを明示するために、
\begin{equation} I[q] \end{equation}
(8)
などと引数を括弧ではなく、角括弧でくくることがあります。

3.2作用積分

$I$ は軌道 $q$ の函数なのですが、まぁ軌道からなんかを計算しろとか良く分かりません…。 しかし、 Fermat の原理(2)式や Maupertuis の原理(3)式を思い起こすと、 これらはすべて各点での何らかの物理量を経路全体で積分したものが最小だという式になっていますね。 なので各点での「何らかの物理量」を、
\begin{equation} L = L(q(t), \dot{q}(t), t) \end{equation}
(9)
とします。 この $L$ を、Lagrangian(ラグランジアン)といいます。
そしてこれの積分を $I$ とします。
\begin{equation} I[q] = \int_{t_a}^{t_b} L \left( q(t), \dot{q}(t), t \right) dt \end{equation}
(10)
この $I$ が最小になるような軌道 $q$ が実際に起こる軌道なんだっ! といえるような $L$ が見つかれば、当初の目的は達成されるといえるでしょう。
なお、この積分値 $I$作用積分(action integral)といいます。

4変分法

作用積分が最小となるための必要条件はなんでしょうか?

4.1変分

「函数の最小値を求めろ」と言われたら、大抵の人は、「微分をして 0 になるからどうのこうの…」とやると思います。
「汎函数の最小値を求めろ」と言われた場合もこれに似た手法を使って求めます。
$I$$q_0$ で最小となるためには、$I[q]$$q=q_0$ から少し ($\epsilon q'(t)$) ずれても、$I$ の値が変わらないことが必要です。 これは、函数の極小値問題で、微分係数が零になることが必要条件であることと対応しています。 $q(t) \rightarrow q(t) + \epsilon q'(t)$ となったときの $I$ の変化量は、
\begin{equation} I[q+\epsilon q'] - I[q] = \int_{t_0}^{t_1} \left( L(q+\epsilon q', \dot{q}+\epsilon\dot{q}', t) - L(q, \dot{q}, t) \right) dt \end{equation}
(11)
$\epsilon$ が小さいことを用いて、右端第一項を Taylor 展開してみると、
\begin{equation} L(q+\epsilon q', \dot{q}+\epsilon \dot{q}', t) = L(q, \dot{q}, t) + \epsilon \left( q' \frac{\partial L}{\partial q} + \dot{q}'\frac{\partial L}{\partial \dot{q}} \right) + \frac{\epsilon^2}{2}\left( q'^2\frac{\partial^2L}{\partial q^2} + 2q'\dot{q}'\frac{\partial^2}{\partial q\partial \dot{q}} + \dot{q}'^2\frac{\partial^2L}{\partial\dot{q}^2} \right) + \cdots \end{equation}
(12)
となります。 これを、(11)式に代入してあげると、
\begin{eqnarray*} I[q+\epsilon q'] - I[q] & = & \int_{t_0}^{t_1} \left( \epsilon \left( q' \frac{\partial L}{\partial q} + \dot{q}'\frac{\partial L}{\partial \dot{q}} \right) + \frac{\epsilon^2}{2}\left( q'^2\frac{\partial^2L}{\partial q^2} + 2q'\dot{q}'\frac{\partial^2}{\partial q\partial \dot{q}} + \dot{q}'^2\frac{\partial^2L}{\partial\dot{q}^2} \right) + \cdots \right) dt \\ & = & \epsilon \int_{t_0}^{t_1} \left( q' \frac{\partial L}{\partial q} + \dot{q}'\frac{\partial L}{\partial \dot{q}} \right) dt + \frac{\epsilon^2}{2} \int_{t_0}^{t_1} \left( q'^2\frac{\partial^2L}{\partial q^2} + 2q'\dot{q}'\frac{\partial^2}{\partial q\partial \dot{q}} + \dot{q}'^2\frac{\partial^2L}{\partial\dot{q}^2} \right) dt + \cdots \end{eqnarray*}
(13)
となります。 ここで、
\begin{eqnarray*} I_1[q, q'] & := & \int_{t_0}^{t_1} \left( q' \frac{\partial L}{\partial q} + \dot{q}'\frac{\partial L}{\partial \dot{q}} \right) dt \\ I_2[q, q'] & := & \int_{t_0}^{t_1} \left( q'^2\frac{\partial^2L}{\partial q^2} + 2q'\dot{q}'\frac{\partial^2}{\partial q\partial \dot{q}} + \dot{q}'^2\frac{\partial^2L}{\partial\dot{q}^2} \right) dt \\ \vdots \hspace{1em} & := & \hspace{5em} \vdots \end{eqnarray*}
(14)
を順番に、汎函数 $I[q]$ の、第一変分(first variation)第二変分(second variation)、…と呼びます。
また、第一変分のことを特に、
\begin{equation} \delta I[q] = \delta \int_{t_a}^{t_b} L \left( q(t), \dot{q}(t), t \right) dt := I_1[q, q'] \end{equation}
(15)
と書きます。 これ以降、単に「変分」と言った時には第一変分を指すこととします。
で、少し前の議論に戻ると、最小になる必要条件は $q$ が少し変化しても $I$ が変化しないことでしたので、この第一変分が 0 であること、
\begin{equation} \delta I[q] = 0 \end{equation}
(16)
が必要なのです。

4.2Euler の方程式

第一変分が 0 になる条件を、式変形によりもう少しわかりやすい形にしてしまいましょう。
その前に、積分区間の端、すなわちスタート地点とゴール地点では軌道 $q$ をずらさないこと、
\begin{equation} q'(t=t_0) = q'(t=t_1) = 0 \end{equation}
(17)
を仮定します(境界条件、と言う)。
作用積分 $I$ の変分は、
\begin{equation} \int_{t_0}^{t_1} \left( q' \frac{\partial L}{\partial q} + \dot{q}'\frac{\partial L}{\partial \dot{q}} \right) dt \end{equation}
(18)
でした。 第二項を部分積分してみると、
\begin{equation} \int_{t_0}^{t_1} \dot{q'}\frac{\partial L}{\partial \dot{q}} dt = \left[ q'\frac{\partial L}{\partial \dot{q}} \right]_{t_0}^{t_1} - \int_{t_0}^{t_1} q' \frac{d}{dt}\frac{\partial L}{\partial \dot{q}} dt \end{equation}
(19)
ですが、さっき言った境界条件によって右辺第一項は 0 になることが分かるので、変分 $\delta I$ は結局、
\begin{equation} \int_{t_0}^{t_1} \left( q' \frac{\partial L}{\partial q} - q' \frac{d}{dt}\frac{\partial L}{\partial \dot{q}} \right) dt = \int_{t_0}^{t_1} q' \left( \frac{\partial L}{\partial q} - \frac{d}{dt}\frac{\partial L}{\partial \dot{q}} \right) dt \end{equation}
(20)
ですから、変分が 任意の $q'$ に対して成り立つことに注意して、
\begin{eqnarray*} && \delta I = 0 \\ \iff && \frac{\partial L}{\partial q} - \frac{d}{dt}\frac{\partial L}{\partial \dot{q}} = 0 \\ \iff && \frac{d}{dt}\frac{\partial L}{\partial \dot{q}} - \frac{\partial L}{\partial q} = 0 \end{eqnarray*}
(21)
です。 この微分方程式を、Euler の方程式(Euler's equation)と言います。

5Lagrange の運動方程式

一旦脇道に逸れましたが、また話を戻します。

5.1Hamilton の原理

\begin{equation} I[q] = \int L(q, \dot{q}, t) dt \end{equation}
(22)
を最小にするような、すなわち[1]
\begin{equation} \delta \int L(q, \dot{q}, t) dt = 0 \end{equation}
(23)
となるような運動が起きるという話しでしたが、$L$ が結局なんなのかについては触れませんでした。
実は、$L$ を、
\begin{equation} L = T - V \end{equation}
(24)
と定めると[2][3]、 Newton の運動方程式と同じになる、ということが言えるのです。 このことを、Hamilton の原理といいます。

5.2Lagrange の運動方程式

また、(23)式の解は、 Euler の方程式に他ならないので、
\begin{equation} \frac{d}{dt} \frac{\partial L}{\partial \dot{q}} - \frac{\partial L}{\partial q} = 0 \end{equation}
(25)
を満たします。 この方程式を、Lagrange の運動方程式といいます。

5.3Eular の方程式と Lagrange の運動方程式の違い

Euler の方程式と、 Lagrange の運動方程式はどう違うんじゃい!とか言われそうなので[4]ちょっと説明すると、 Euler の方程式の方は別に $L$$q$ が(運動エネルギー)-(ポテンシャルエネルギー)であることや、座標であるとは言っていません。
\begin{equation} \delta \int A(y(x), y'(x), x) dx = 0 \end{equation}
(26)
という形の変分方程式と、
\begin{equation} \frac{d}{dx} \frac{\partial A}{\partial y'} - \frac{\partial A}{\partial y} = 0 \end{equation}
(27)
が同じ物だということを言っているのに過ぎません。
一方、 Lagrange の運動方程式は、世界は、
\begin{equation} \frac{d}{dt} \frac{\partial L}{\partial \dot{q}} - \frac{\partial L}{\partial q} = 0 \end{equation}
(28)
が成り立つように運動をしている、ということを言っているのです[5]

[1]「すなわち」と書きましたが、同値ではないです。。。
[2]$T$ は運動エネルギー、$V$ はポテンシャルエネルギーです
[3]また質点に働く力は保存力のみ、すなわちポテンシャルエネルギーの考えられる力のみだということを仮定しています
[4]そんなこたないか。まぁ念のため、ということでw
[5]別に Lagrange の方が偉いとか、そういう意味は含まれていませんので

6正当性

Lagrange の運動方程式は本当に正しいのでしょうか? Lagrange の運動方程式と Newton の運動方程式が同値である(同じ主張である)ことを証明しましょう。

6.1直交座標系では

まずは、$q$ が直交座標系であると思って話を進めましょう[1]
また直交座標を扱っているという雰囲気を醸し出すために、座標を $q$ でなく、$x$ と書きます[2]
\begin{equation} \frac{d}{dt} \frac{\partial L}{\partial \dot{x}} - \frac{\partial L}{\partial x} = 0 \end{equation}
(29)
$L$ は (運動エネルギー) - (ポテンシャルエネルギー) でした。 よって、 Lagrangian は、
\begin{equation} L = \frac{1}{2} m \dot{x}^2 - V \end{equation}
(30)
となります。 従って、(29)式の第一項の時間微分の中身は、
\begin{eqnarray*} \frac{\partial L}{\partial \dot{x}} & = & \frac{\partial}{\partial \dot{x}} \left( \frac{1}{2} m \dot{x}^2 \right) - \frac{\partial}{\partial \dot{x}}V \\ & = & m \dot{x} - 0 \\ & = & m \dot{x} \\ \end{eqnarray*}
(31)
よって、第一項は結局、
\begin{eqnarray*} \frac{d}{dt} \frac{\partial L}{\partial \dot{x}} & = & \frac{d}{dt} \left( m \dot{x} \right) \\ & = & m \ddot{x} \end{eqnarray*}
(32)
となります。 次に第二項ですが、
\begin{eqnarray*} \frac{\partial L}{\partial x} & = & \frac{\partial}{\partial x} \left( \frac{1}{2} m \dot{x}^2 \right) - \frac{\partial}{\partial x}V \\ & = & 0 - (-f) \\ & = & f \end{eqnarray*}
(33)
となります。
以上から、 Lagrange の運動方程式は結局、
\begin{equation} m \ddot{x} - f = 0 \end{equation}
(34)
と同等だと示されました。 ↑はどっからどうみても Newton の運動方程式です!

6.2極座標では

\begin{equation} \left(\begin{array}{c} x \\ y \end{array}\right) = r \left(\begin{array}{c} \cos \theta \\ \sin \theta \end{array}\right) \end{equation}
(35)
なる二次元極座標で Lagrange の運動方程式は形を変えずに成り立つでしょうか?
とりあえず頑張って微分しまくって、 Newton の運動方程式を立ててみると、
\begin{equation} m \left( (\ddot{r}-r\dot{\theta}^2)\cos\theta - (\dot{r}\dot{\theta}+r\ddot{\theta})\sin\theta \right) = - \frac{\partial V}{\partial x} \end{equation}
(36)
\begin{equation} m \left( (\ddot{r}-r\dot{\theta}^2)\sin\theta + (\dot{r}\dot{\theta}+r\ddot{\theta})\cos\theta \right) = - \frac{\partial V}{\partial y} \end{equation}
(37)
となります[3]。 また Lagrangian も頑張って計算すると、
\begin{equation} L = \frac{1}{2}m\left(\dot{r}^2+r^2\dot{\theta}^2\right) - V \end{equation}
(38)
となります[4]
ここで、 Lagrange の運動方程式っぽい子たちを計算してみるとそれぞれ、
\begin{eqnarray*} \frac{d}{dt}\left(\frac{\partial L}{\partial \dot{r}}\right) & = & \frac{d}{dt}\left(m\dot{r}\right) \\ & = & m\ddot{r} \end{eqnarray*}
(39)
\begin{eqnarray*} \frac{\partial L}{\partial r} & = & mr\dot{\theta}^2 - \left(\frac{\partial V}{\partial x}\frac{\partial x}{\partial r} + \frac{\partial V}{\partial y}\frac{\partial y}{\partial r} \right) \\ & = & mr\dot{\theta}^2 - \left( \frac{\partial V}{\partial x}\cos\theta + \frac{\partial V}{\partial y}\sin\theta \right) \end{eqnarray*}
(40)
\begin{eqnarray*} \frac{d}{dt}\left(\frac{\partial L}{\partial \dot{\theta}}\right) & = & \frac{d}{dt}\left(mr^2\dot{\theta}\right) \\ & = & m\left(2r\dot{r}\dot{\theta}+r^2\ddot{\theta}\right) \end{eqnarray*}
(41)
\begin{eqnarray*} \frac{\partial L}{\partial \theta} & = & \frac{\partial V}{\partial x}\frac{\partial x}{\partial \theta} + \frac{\partial V}{\partial y}\frac{\partial y}{\partial \theta} \\ & = & \frac{\partial V}{\partial x}\left(-r\sin\theta\right) + \frac{\partial V}{\partial y}\left(r\cos\theta\right) \end{eqnarray*}
(42)
となります。 ここで(36)式、(37)式をみると、なんと、
\begin{eqnarray*} \frac{d}{dt}\left(\frac{\partial L}{\partial \dot{r}}\right) - \frac{\partial L}{\partial r} & = & 0 \\ \frac{d}{dt}\left(\frac{\partial L}{\partial \dot{\theta}}\right) - \frac{\partial L}{\partial \theta} & = & 0 \end{eqnarray*}
(43)
が成立しているではないですかっ!
つまり Lagrange の運動方程式は、直交座標から極座標に移しても形をまったく変えないんです! Newton の運動方程式は(36)式、(37)式のように大きく形を変えてしまうことを思えばこれがどんなに素晴らしい、美しいことか分かるでしょう。

6.3一般の場合

上の結果を見て、昔の人はこう思ったのではないでしょうか。
「Lagrange の運動方程式は極座標に移してもそのまま…だと…?
実はこれ、極座標の時だけじゃなくて、どんな変換でも成り立つんじゃね?」
てな風に。
上にも書きましたが、このこと、成り立っちゃうんです。

6.3.1設定

まず、いままで粒子の個数は一つだと思って議論を進めて来ましたが、別にたくさんあってもいいので粒子は全部で $N$ 個あるとします。 各粒子には空間三座標の成分がありますので、座標変数の個数は全部で $3N$ 個です。 これらを、
\begin{equation} \{x_1, x_2, \cdots, x_{3N}\} \end{equation}
(44)
と書きます。
そして新しい座標を、
\begin{eqnarray*} q_1 & := & q_1 (x_1, \cdots, x_{3N}) \\ q_2 & := & q_2 (x_1, \cdots, x_{3N}) \\ \vdots & := & \hspace{3em} \vdots \\ q_{3N} & := & q_{3N}(x_1, \cdots, x_{3N}) \end{eqnarray*}
(45)
またその「速度」[5]は、
\begin{eqnarray*} \dot{q}_1 & := & \dot{q}_1 (x_1, \cdots, x_{3N}, \dot{x}_1, \cdots, \dot{x}_{3N}) \\ \dot{q}_2 & := & \dot{q}_2 (x_1, \cdots, x_{3N}, \dot{x}_1, \cdots, \dot{x}_{3N}) \\ \vdots\hspace{0.5em} & := & \hspace{5em} \vdots \\ \dot{q}_{3N} & := & \dot{q}_{3N}(x_1, \cdots, x_{3N}, \dot{x}_1, \cdots, \dot{x}_{3N}) \end{eqnarray*}
(46)
Lagrangian は、
\begin{equation} L = L(q_1, \cdots, q_{3N}, \dot{q}_1, \cdots, \dot{q}_{3N}, t) \end{equation}
(47)
とします。

6.3.2証明

\begin{equation} J := \frac{d}{dt} \left( \frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i} \right) - \frac{\partial L}{\partial q_i} \end{equation}
(48)
が恒等的に 0 であることを示しましょう。
\begin{eqnarray*} \frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i} & = & \frac{\partial L}{\partial \dot{x}_j} \frac{\partial \dot{x}_j}{\partial \dot{q}_i} + \frac{\partial L}{\partial x_j} \frac{\partial x_j}{\partial \dot{q}_i} \\ & = & \frac{\partial L}{\partial \dot{x}_j} \frac{\partial \dot{x}_j}{\partial \dot{q}_i} \end{eqnarray*}
(49)
同様に、
\begin{equation} \frac{\partial L}{\partial q_i} = \frac{\partial L}{\partial \dot{x}_j} \frac{\partial \dot{x}_j}{\partial q_i} + \frac{\partial L}{\partial x_j} \frac{\partial x_j}{\partial q_i} \end{equation}
(50)
なので、 $J$ は、
\begin{equation} J = \frac{d}{dt}\left(\frac{\partial L}{\partial \dot{x}_j}\right)\frac{\partial \dot{x}_j}{\partial \dot{q}_i} + \frac{\partial L}{\partial \dot{x}_j}\frac{d}{dt}\left(\frac{\partial \dot{x}_j}{\partial \dot{q}_i}\right) - \left( \frac{\partial L}{\partial \dot{x}_j}\frac{\partial \dot{x}_j}{\partial q_i} + \frac{\partial L}{\partial x_j}\frac{\partial x_j}{\partial q_i} \right) \end{equation}
(51)
です。 ここで、
\begin{eqnarray*} \frac{\partial \dot{x}_j}{\partial \dot{q}_i} & = & \frac{\partial}{\partial \dot{q}_i}\left( \frac{\partial x_j}{\partial q_k}\dot{q}_k \right) \\ & = & \frac{\partial x_j}{\partial q_i} \end{eqnarray*}
(52)
と、
\begin{eqnarray*} \frac{d}{dt}\left(\frac{\partial \dot{x}_j}{\partial \dot{q}_i}\right) & = & \frac{d}{dt}\left(\frac{\partial x_j}{\partial q_i}\right) \\ & = & \frac{\partial^2 x_j}{\partial q_k \partial q_i}\dot{q}_k \\ & = & \frac{\partial}{\partial q_i}\left(\frac{\partial x_j}{\partial q_k}\dot{q}_k\right) \\ & = & \frac{\partial \dot{x}_j}{\partial q_i} \end{eqnarray*}
(53)
に注意すると、(51)式の第一項と第四項、および第二項と第三項が打ち消しあって、
\begin{equation} J = 0 \end{equation}
(54)
となる事が証明できました[6]

[1]「まずは」としたのは、実は Lagrange の運動方程式においては、座標は直交座標だけでなく、いかなる座標系においても成立することが分かるからです
[2]それと一次元での話です。三次元の場合もほぼ同じ議論ですので省略します
[3]頑張ってね!
[4]頑張るといいよ!!
[5]「速度」とかぎ括弧をつけたのは、座標変数の単純時間微分であり、私たちが言う所の速度とは少し違うからです(新しい座標が極座標なら、「角速度」とか言ったりしますね)
[6]偏微分のオンパレードでちょっととっつきにくいかもしれません…。なので「まぁ成り立つんだなぁ…」ぐらいに思ってくれれば結構です

7一般化座標

さて、上の証明で Lagrange の運動方程式はどんな座標系でも成り立つことが示されたのでした。
上の $q_i$ を、一般化座標(generalized coordinates)といいます。 また Lagrange の運動方程式に出てきた、
\begin{equation} p_i := \frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i} \end{equation}
(55)
を、一般化運動量(generalized momentum)、そして、
\begin{equation} f_i := \frac{\partial L}{\partial q_i} \end{equation}
(56)
を、一般化力(generalized force)といいます。
なぜこの様に定義したかというと、この記号を用いると、 Lagrange の運動方程式は、
\begin{eqnarray*} \frac{d}{dt}\frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i} & = & \frac{\partial L}{\partial q_i} \\ \frac{dp_i}{dt} & = & f_i \end{eqnarray*}
(57)
と、 Newton の運動方程式とまったく同じ形になるからです。
「…すごっ」とか思ってはいけません。こうなるように定義しただけの話なので[1]。 でもちょっと置き換えをやっただけで Lagrange の運動方程式と Newton の運動方程式が同じ形になる、というのは感動もんですねw

[1]というか直行座標系での Lagrange の運動方程式の正当性の証明を眺めれば、なぜこのようにうまくいくのか分かると思います