$ \DeclareMathOperator{\arccosh}{arccosh} \DeclareMathOperator{\arcsinh}{arcsinh} \DeclareMathOperator{\rank}{rank} \DeclareMathOperator{\rot}{rot} \DeclareMathOperator{\grad}{grad} \DeclareMathOperator{\diver}{div} $

曲率と曲率半径

一次近似は一次式、つまり曲線を直線で近似する方法です。 同様に、二次近似は二次式(放物線)で曲線を近似する方法です。 そして一般に n 次近似とは、曲線を n 次式で近似する方法でした。
これと同様に、曲線を多項式ではなく円弧の一部として近似する方法があります。 それを紹介したいと思います。
なお、高校卒業レベルの微分学の知識を仮定します。

1陽函数の場合

1.1設定

まずは $y=y(x)$ という形でかける函数を考えてみましょう。
陽函数の場合
図のように各種変数を設定します。 ただし、$\Delta \theta$$\Delta x$ などの $\Delta$ 付きの変数は微小量だとしておきます。

1.2円弧の半径を求めよう

それで何をするのかというと、曲線を近似する円弧の半径が分かればいいと思います。 なぜなら、R が大きい円はほとんど曲がりがない曲線で[1]、半径が小さい曲線はすごくきついカーブを持った曲線だと判断できるからです。
ということで R を求めましょう。
まず、点 A と点 B の間の曲線は $\Delta \theta$ が小さければ近似している円弧とほぼ同じ図形になるので、
\begin{equation} R \Delta \theta = \Delta s \end{equation}
(1)
\begin{equation} \text{i.e. } R = \frac{\Delta s}{\Delta \theta} \end{equation}
(2)
が成り立ちます。 ということは後は $\Delta \theta$$\Delta s$ が分かれば OK ですね。

1.3Δs

まずは簡単な $\Delta s$ の方から考えていきましょう。 $\Delta s$$\Delta \theta$ が小さければほとんど点 A, B 間の距離と同じです。 つまり、
\begin{align*} \Delta s & = \sqrt{\Delta x^2 + \Delta y^2} \\ & = \sqrt{1 + \left(\frac{\Delta y}{\Delta x}\right)^2} \cdot \Delta x \end{align*}
(3)
と表せます。

1.4Δθ

次は $\Delta \theta$ 。 図にも書きましたが、絵を見て明らかなように、
\begin{equation} \Delta \theta = \beta - \alpha \end{equation}
(4)
です。
「ということは $\alpha$$\beta$ を求めれば…」と思いたいところですが、いくら考えてもこれらを求めることはできません! 「じゃあどうするんだっ!」という話ですが、$\alpha$$\beta$ は直接分からなくても、分かるモノがありますね。
\begin{equation} \tan \alpha = \frac{dy}{dx}(a) \end{equation}
(5)
\begin{equation} \tan \beta = \frac{dy}{dx}(b) \end{equation}
(6)
という関係です。
そうすると $\Delta \theta = \beta - \alpha$ は分からなくても、タンジェントの加法定理から、
\begin{align*} \tan (\beta - \alpha) & = \frac{\tan \beta - \tan \alpha}{1 + \tan \beta \tan \alpha} \\ & = \frac{\frac{dy}{dx}(b) - \frac{dy}{dx}(a)}{1 + \frac{dy}{dx}(b)\frac{dy}{dx}(a)} \end{align*}
(7)
$\tan \Delta \theta$ の値は計算できます。 ところで $\Delta \theta$ は微小量ですから、
\begin{equation} \tan \Delta \theta \approx \Delta \theta \end{equation}
(8)
と近似できます。 従って、
\begin{equation} \Delta \theta = \frac{\frac{dy}{dx}(b) - \frac{dy}{dx}(a)}{1 + \frac{dy}{dx}(b)\frac{dy}{dx}(a)} \end{equation}
(9)
となります。

1.5曲率半径

さぁ、これで $\Delta s$$\Delta \theta$ が分かったので、早速(2)式に代入してみましょう。
\begin{align*} R & = \frac{\Delta s}{\Delta \theta} \\ & = \sqrt{1 + \left(\frac{\Delta y}{\Delta x}\right)^2} \cdot \Delta x \times \left(\frac{\frac{dy}{dx}(b) - \frac{dy}{dx}(a)}{1 + \frac{dy}{dx}(b)\frac{dy}{dx}(a)}\right)^{-1} \\ & = \sqrt{1 + \left(\frac{\Delta y}{\Delta x}\right)^2} \left(\frac{\frac{dy}{dx}(b) - \frac{dy}{dx}(a)}{\Delta x}\right)^{-1} \left(1 + \frac{dy}{dx}(b)\frac{dy}{dx}(a)\right) \\ \end{align*}
(10)
となるので、$\Delta x \rightarrow 0$ とすると、
\begin{align*} R & = \lim_{\Delta x \rightarrow 0} \sqrt{1 + \left(\frac{\Delta y}{\Delta x}\right)^2} \left(\frac{\frac{dy}{dx}(b) - \frac{dy}{dx}(a)}{\Delta x}\right)^{-1} \left(1 + \frac{dy}{dx}(b)\frac{dy}{dx}(a)\right) \\ & = \sqrt{1 + \left(\frac{dy}{dx}\right)^2} \left(\frac{d^2y}{dx^2}\right)^{-1} \left(1 + \left(\frac{dy}{dx}\right)^2\right) \\ & = \left(1 + \left(\frac{dy}{dx}\right)^2\right)^{\frac{3}{2}} \left(\frac{d^2y}{dx^2}\right)^{-1} \end{align*}
(11)
となります。
この R のことを符号付き曲率半径(signed radius of curvature)といいます。

1.6曲率

曲率半径が大きいほど曲がりが小さく、曲率半径が小さいほど曲がりが大きい曲線を表します。
しかし曲線の曲がり具合を表したいのなら、曲がり具合が小さい(直線に近い)部分では小さい値になり、曲がり具合が大きい(カーブがきつい)部分では大きい値になるような物の方がしっくりくると思います。 そこで符号付き曲率(signed curvature)というものを次の式で定義します。
\begin{equation} \kappa := \frac{1}{R} = \left(1 + \left(\frac{dy}{dx}\right)^2\right)^{-\frac{3}{2}} \left(\frac{d^2y}{dx^2}\right) \end{equation}
(12)
こうすれば、曲率が大きいほど曲がりが大きく、曲率が小さいほど曲がりが小さい直線を表すので、都合のいい量になりますね (^^

1.7曲率中心

言い忘れていましたが、近似している円弧の中心のことを曲率中心(center of curvature)といいます。

1.8符号について

上で求めた曲率や曲率半径は符号付きのもので、負にも正にもなります。
じゃあどういう時に正になり、どういう時に負になるのかというと、曲線上を左から右に歩いていくことを考えたときに、図のように向かって左側(上側)に曲がる時には R は正となります。 一方、右側(下側)に曲がる場合には $\Delta \theta$ が負の方向(時計回りの方向)になるので、曲率半径 R は負になります。
つまり、曲率や曲率半径の符号どちらに向かって曲がっているかを表しています。 一方、曲率や曲率半径の大きさ曲がり具合を表す値でしたね。
  • 符号
    曲がる向きを表す。
    • 正 → 左回り
    • 負 → 右回り
  • 大きさ
    曲がり具合を表す。
なお、単に曲率とか曲率半径とか言った場合には普通、符号付きの曲率や曲率半径の絶対値のことを指します。

[1]地球なんかは半径がものすごく大きいので、地表はどう考えても真っ直ぐにしか見えないわけですね

2パラメータ曲線の場合

次にパラメータ曲線の場合の曲率と曲率半径を求めてみましょう。

2.1設定

図は上とほぼ同じなので省略させていただきます[1]
曲線がパラメータを t として、
\begin{equation} \bm{r} = \bm{r}(t) = \left(\begin{matrix} x(t) \\ y(t) \end{matrix}\right) \end{equation}
(13)
と表されているとします。

2.2Δs

まず $\Delta s$ ですが、これは単純に二点間の距離なので、
\begin{equation} \Delta s = || \bm{r}_B - \bm{r}_A || \end{equation}
(14)
でいいでしょう。 なお、$\bm{r}_A$ および $\bm{r}_B$ はそれぞれ点 A, B の位置ベクトルとします。

2.3Δθ

つぎに $\Delta \theta$ ですけど、上と同じようにこれを直接求めることはできません。 しかし、点 A, B での接線方向のベクトルはそれぞれ、
\begin{equation} \dot{\bm{r}}_A := \frac{d\bm{r}}{dt} (t_A) \end{equation}
(15)
\begin{equation} \dot{\bm{r}}_B := \frac{d\bm{r}}{dt} (t_B) \end{equation}
(16)
であり、この二つのベクトルのなす角が $\Delta \theta$ なので、
\begin{equation} \sin \Delta \theta = \frac{1}{\dot{r}_A \dot{r}_B} \det(\dot{\bm{r}}_A, \dot{\bm{r}}_B) \end{equation}
(17)
が成り立ちます。 $\Delta \theta \ll 1$ ならば、
\begin{equation} \Delta \theta \approx \sin \Delta \theta \end{equation}
(18)
と近似できますから、
\begin{equation} \Delta \theta = \frac{1}{\dot{r}_A \dot{r}_B} \det(\dot{\bm{r}}_A, \dot{\bm{r}}_B) \end{equation}
(19)
がいえます。

2.4曲率

これで曲率および曲率半径を計算する準備が整いました! ということで曲率から計算していきましょう。
\begin{align*} \kappa & = \frac{\Delta \theta}{\Delta s} \\ & = \frac{1}{\dot{r}_A \dot{r}_B} \det(\dot{\bm{r}}_A, \dot{\bm{r}}_B) \times (|| \bm{r}_B - \bm{r}_A ||)^{-1} \\ & = \frac{1}{\sqrt{(\dot{x}_A^2 + \dot{y}_A^2)(\dot{x}_B^2 + \dot{y}_B^2)}} (\dot{x}_A \dot{y}_B - \dot{y}_A \dot{x}_B) \times (|| \bm{r}_B - \bm{r}_A ||)^{-1} \\ & = \frac{1}{\sqrt{(\dot{x}_A^2 + \dot{y}_A^2)(\dot{x}_B^2 + \dot{y}_B^2)}} \left( \frac{\dot{x}_A\dot{y}_B-\dot{x}_A\dot{y}_A}{\Delta t} - \frac{\dot{x}_B\dot{y}_A-\dot{x}_A\dot{y}_A}{\Delta t} \right) \times \left(\frac{|| \bm{r}_B - \bm{r}_A ||}{\Delta t}\right)^{-1} \\ & = \frac{1}{\sqrt{(\dot{x}_A^2 + \dot{y}_A^2)(\dot{x}_B^2 + \dot{y}_B^2)}} \left( \dot{x}_A \frac{\dot{y}_B-\dot{y}_A}{\Delta t} - \frac{\dot{x}_B-\dot{x}_A}{\Delta t} \dot{y}_A \right) \times \left|\left|\frac{\bm{r}_B - \bm{r}_A}{\Delta t}\right|\right|^{-1} \\ \end{align*}
(20)
となるので、ここで $\Delta t \rightarrow 0$ の極限をとって、
\begin{align*} \kappa & = \lim_{\Delta t \rightarrow 0} \left( \frac{1}{\sqrt{(\dot{x}_A^2 + \dot{y}_A^2)(\dot{x}_B^2 + \dot{y}_B^2)}} \left( \dot{x}_A \frac{\dot{y}_B-\dot{y}_A}{\Delta t} - \frac{\dot{x}_B-\dot{x}_A}{\Delta t} \dot{y}_A \right) \times \left|\left|\frac{\bm{r}_B - \bm{r}_A}{\Delta t}\right|\right|^{-1} \right) \\ & = \frac{1}{(\dot{x}^2 + \dot{y}^2)} (\dot{x}\ddot{y} - \ddot{x}\dot{y}) \times ||\dot{\bm{r}}||^{-1} \\ & = \frac{\dot{x}\ddot{y} - \dot{y}\ddot{x}}{(\dot{x}^2 + \dot{y}^2)^{\frac{3}{2}}} \end{align*}
(21)
となります。

2.5曲率半径

曲率半径はこれの逆数ですから、
\begin{equation} R = \frac{(\dot{x}^2 + \dot{y}^2)^{\frac{3}{2}}}{\dot{x}\ddot{y} - \dot{y}\ddot{x}} \end{equation}
(22)
となります。

2.6陽函数の場合の確認

さて、パラメータ曲線の場合の曲率と曲率半径を求めたわけですが、実はこれ、上の陽函数の場合も含むんです!
どういうことかというと、
\begin{equation} y = y(x) \end{equation}
(23)
と書いてしまえば上と同じですから、これを代入すれば陽函数の場合の式になるわけです。 当然といえば当然ですがw
そこで(21)式にこれを代入して、(12)式になることを確認してみましょう。 なお、以下では $y' = \frac{dy}{dx}$ とします。 記号の上に点を打つのは $\dot{y} = \frac{dy}{dt}$ ですので、お間違えの無きよう[2]
まずは、
\begin{align*} \dot{y} & = \frac{dy}{dt} \\ & = \frac{dx}{dt} \frac{dy}{dx} \\ & = \dot{x} y' \end{align*}
(24)
および、
\begin{align*} \ddot{y} & = \frac{d}{dt} \frac{dy}{dt} \\ & = \frac{d}{dt}(\dot{x} y') \\ & = \ddot{x}y' + \dot{x} \frac{dy'}{dt} \\ & = \ddot{x}y' + \dot{x} \times \dot{x} y'' \\ & = \ddot{x}y' + \dot{x}^2y'' \end{align*}
(25)
に注意します。
これを用いると、
\begin{align*} \kappa & = \frac{\dot{x}\ddot{y} - \dot{y}\ddot{x}}{(\dot{x}^2 + \dot{y}^2)^{\frac{3}{2}}} \\ & = \frac{\dot{x} (\ddot{x}y' + \dot{x}^2y'') - \dot{x} y' \times \ddot{x}}{(\dot{x}^2 + \dot{x}^2y'^2)^\frac{3}{2}} \\ & = \frac{\dot{x}^2 y''}{\dot{x}^3 (1 + y'^2)^\frac{3}{2}} \\ & = \frac{y''}{(1 + y'^2)^\frac{3}{2}} \end{align*}
(26)
となり、(12)式と同じになりました[3]

[1]図を書くのも結構面倒なんだよ、これが
[2]分かりにくくてスミマセン (>o<) 打つのも面倒なんですよ…
[3](12)式もこういう感じで(「'」を使って)書いておいた方が分かりやすかったですかね…